営業×取次×書店員のタッグ

 その中心人物が、双葉社の川庄篤史営業局次長だ。『小説推理』(双葉社)掲載時から『告白』に注目していた川庄氏は、「とにかく面白かった。エンタテインメント小説として売りたいと思った」と話す。そこで、発売3カ月前の08年5月に、都内の書店員10名、取次の日販に声をかけ「湊かなえプロジェクト」を発足。タイトルも正式に決まっていなかった時期から、装丁や書店に置くパネルなどの拡販材料が練られていった。一日400点以上の書籍が出版される中で、発売前からのこうした活動は異例中の異例だ。

 一方、日販は、年間約10冊を選び、重点的に拡販する「ベストセラー発掘プロジェクト」に『告白』を位置づけた。同社の古幡瑞穂MD係長は、「ゲラを読んだらとても面白くて。川庄さんの熱い思いにみんなが巻き込まれていった」と話す。この際に活用したのが、同社が構築した、全国書店の25%にあたる約2700店舗の販売状況が把握できる「オープンネットワークWIN」のデータ。吉田修一の『悪人』(朝日新聞社)などを類似書と考え、同書の販売実績の高い書店を中心に重点的に宣伝展開をした。また、発売前の事前予約も書店に募り、予約店には満数配本するという新刊では珍しい対応をした。

 グラフ2の性・年代別売り上げを見ると、40代女性を中心に売れていることが分かる。「10代にターゲットを絞ることでまだまだ売れると思います」と古幡氏は意気込む。作品の面白さと優れたマーケティングが合致した結果の大ヒット本『告白』。今後どこまで売り上げを伸ばせるかも注目だ。

日販オープンネットワークWIN調べ(08年10月13日~09年4月9日)
対象はHonyaClubカード加盟店(284店舗・267万人)

(文/松谷 創一郎 写真/柳沼 涼子)

※この記事は日経エンタテインメント!(6月号)より転載しました。