転換期を迎えるコンビニ業界の今後の展開

 コンビニ業界の今後について、小売業界に詳しい経済評論家の平野和之氏に聞いた。

――コンビニ業界の今後をどのように見ていますか?

平野和之氏(以下:平野) 百貨店などの小売業界全般が落ち込むなか、コンビニエンスストアそのものは2ケタの増収を続けており、2008年の業界売上高では約7兆8千億と、7兆3千億円市場の百貨店売上高を初めて超えました。背景として、タスポ効果と、ガソリン高騰によって徒歩消費、いわゆる“巣ごもり消費”が増えたことが伺えます。しかし、市場は増えても、競争激化のあおりを受けて、業界自体は飽和状態です。今後、生き残りをかけた再編、買収は加速するのではないでしょうか。

――今回のam/pm買収によって、ローソンは業界首位奪還も視野に入れているのでは、と思うのですが。

平野 はっきり申し上げますと、セブンは安泰、ローソンは苦しい戦いを強いられるのではないでしょうか。元々am/pmは賃料の高い都心の店舗が多く、2007年度時点での債務超過は122億円と赤字経営を脱しておりません。1店舗当たりの売上でもセブン-イレブンに大きく水を空けられております。セブン-イレブンは財務バランスも良く、キャッシュフローも潤沢なので、今後も1位の座は揺るがないでしょう。

 平野氏は続けて、マーケットの原則に従えば、大手として生き残るのは2社程度に絞られてくるのではないか、と話す。

平野 マーケティング論では、ある業種において業界1位、2位などの最大手と、独自性を打ち出したニッチなマーケットで強い企業は生き残り、それ以外は苦戦を強いられる、という原則があります。それによると、ファミリーマート(業界3位)、サークルKサンクス(業界4位)などは、現状のままでは増収を生み出すことは難しいのではないでしょうか。ニッチなマーケットでの高いシェアを打ち出していくか、あるいは大手に吸収されるか、合併で1位2位を目指すかのどれかを選択する必要がありそうです。

 過当競争が続き閉店する店舗も多いが、独自性を打ち出せれば、店舗数で劣るチェーンでも生き残るケースもあるという。

――ニッチなマーケットで強い、付加価値にはどのようなものがあるでしょうか?

平野 ビジネスモデル、収益モデルなどのほかに、立地で独自性を打ち出す方法もあります。東京・赤坂のTBS本社に、ビル内の人だけが立ち寄れるセブン-イレブンがあり、1日数百万円の売上があると聞きます。オフィス内コンビニは今後も増えていくのではないでしょうか。企業としては社員の福利厚生にも応用できますしね。

 コンビニを含む小売業は立地がすべてだと平野氏は話す。

平野 TBSの例もあるように、そもそも、小売業は“立地”がモノを言うビジネスです。一番早くチェーン展開を始めたセブン-イレブンが良い立地に多数出店しており、絶対的な優位は揺るぎません。セブンは金融業の『セブン銀行』も好調です。ATMを置いて手数料収入を稼ぐビジネスモデルですが2008年9月中間決算では前年同期と比べて45.5%増の90億円。これも、いい立地だから、新しいサービスがより多くの人に訴求でき、ヒットしやすい。このようにスケールメリットを活かした新サービスを提案できれば、コンビニは無数の可能性を秘めています。

――では、そんな王者のセブン-イレブンにとって最も驚異となるものはどういったものですか?

平野 売上の減収が続いている百貨店やスーパーマーケットなど、別の業態の企業が新規参入を仕掛けるケースが起きるでしょう。個人的には、ヤマダ電機は小売店としてセブン&アイホールディングスに対抗しうる総合スーパーになる可能性を秘めているのではないかと思います。また、マツモトキヨシなど、ドラッグストアなど様々な業態との競合が今後は起きていくと思われます。

――利用者から見て、コンビニはどう変わっていくのでしょうか?

平野 例えば通販会社・宅配業者等との連携で商品の宅配サービス向上、革新が進むと考えられます。“巣ごもり消費”をより進化させることになるでしょう。プライベートブランドの充実などによる、ディスカウントなども期待できます。消費者にとってもさまざまなメリットを今まで以上にもたらすでしょう。これができるかどうかが、コンビニ業界の成長のキーポイントです。

 人口減少、高齢化社会による需要減退とネット社会の浸透で流通業界、小売業界は岐路に立たされている。かつて、時代を先導してきたコンビニエンスストアも、変わらなければならない立場に立たされている。

プロフィール

平野 和之

1975年神奈川県生まれ。法政大学卒業後、一部上場企業を経て独立。企業のマーケティング業務、投資分析などを行うと同時に経済アナリストとしてメディア出演のほか、執筆・講演活動などを行っている。文藝春秋『クビきられないマニュアル』発売中。
公式サイト:http://www.hirano.cn