メジャーリリースのハードル

 そうした動画サイト生まれの人気曲『メルト』『恋は戦争』『ブラック★ロックシューター』を生み出したのが、楽曲制作者のryo氏率いるsupercellというプロジェクトだ。キャラクターデザインや動画編集など様々なクリエイターが参加している。

 これまで彼らの音源は自主流通盤としてコミックマーケットやアニメ・同人系の販売店に並ぶこともあったが、あっという間に売り切れてしまい、一般リスナーの手にはなかなか届かなかった。クリエイター側としても、そうした大量のニーズに応えるには限界があった。

 それが今回のメジャーリリースへとつながっていく。彼らの音源を扱うメジャーのメリットも大きかったはずだ。なにより楽曲の完成度は高く、すでに動画サイトで高い人気もある。特に代表曲である『メルト』の人気は高く、ニコニコ動画での再生回数はそろそろ400万回に届きそうな勢いだ。制作もプロモーションもコストをかけずに済む上に、初音ミクなら確実に売れる。

 ただ、クリエイター側としては、安直にメジャーに乗せられない理由もある。ボーカロイド楽曲の人気を支えたのは動画サイトのユーザーたちだ。彼らは楽曲をリミックスの素材として使い、初音ミクが3DCGで動き回るようなプロモーションビデオを作ったりと、様々な形で楽曲の価値を高めてきた。

 そうした二次利用が可能なのも、楽曲の全権利を作者自身が持っていて、作者がその状況を許しているからだ。しかし、楽曲の権利が一部でも作者の手から離れると、その状況は成り立たなくなくなる。メジャーでの流通はそこが課題だった。