一から作り直すため、一旦「発売中止」に

――申し込みから実際の発売までの期間は3カ月程度だったと記憶していますが、その3カ月の間に、発売中止になるということで、一部でもニュースになりましたね。いったい何があったんでしょう?

高橋名人:発売から20年が経過していると当時の部品が現在では入手できなくて、金型も残っていないから、すべて一から作り直したんです。それがある程度完成してきて、デバッグや動作チェックをしていたんですが、次から次へと不具合が出てきたんです。僕もあがってきたのを見て、「何これ!」って愕然としたんですよ(笑)。

 企画をした時点で簡単に再現できるだろうと考えていたことが、実際に作ってみるとほとんどできていない。不具合を一つ潰すと、また新しい不具合が出てくる。さらに本体のプラスチックの材質がいまひとつで、これはもう一度改めて作り直したほうがいいのではないか、ということになったんです。

――素材の材質までこだわったんですね。

高橋名人:当時遊んだ人がお父さんになっていて、そういう人たちが子供に遊ばせたときに、簡単に壊れては困りますからね。壊れないのが大前提ですよね。

――そこで企画を一度リセットしたんですね。

高橋名人:そうですね。品質を重視して一から作り直すとなると、発売時期がまったく読めなくなるので、社内の会議で一旦「販売中止」とすることを決めました。

企画をやめてしまう中止ではなく、無期延期を意味する中止だったが、予約を受けたあとだったため、あまり好意的には受け入れられなかったという(画像クリックで拡大)

――「延期」ではなく、「中止」というのが驚きました。

高橋名人:継続で予約を引っ張っていると、ある程度早く作らないといけませんからね。長くても6カ月が限界。でも当時は作り直す時間がまったく読めなくて、予約してくれた方には大変申し訳なく思いながらも一度中止にして、期間を考えずに素材の選定からプログラムするスタッフの選定、品質管理などを一からやり直しました。

――その後の開発は順調だったんですか?

高橋名人:そうですね、その後は比較的順調でした。慌てて作る必要はなくなりましたからね。中止とアナウンスしてから結局丸1年かかってしまい、多方面からずいぶんお叱りを受けました。「シュウォッチなんか半年ぐらいで出せるんじゃないの?」って(笑)。でも実際には発売から20年が経過していて当然金型も最初から作り直しで、中止してから数カ月は開発担当者や素材の選定し直しに時間を割いていたぐらい、慎重に動いていたんです。

――名人は今回の復刻版の開発にはどのように関わっていたんですか?

高橋名人:全体的な監修で、特に決定的な部分を重点的に見ています。たとえばボタンの中にあるゴムの固さとか、現存のパーツを10個ぐらい用意してもらって、選定をしました。実は当時の未使用のシュウォッチ自体が、私が個人所有している未開封のものしか残っていなくて、当然それも経年劣化でボタンの押し心地も違いますから、参考にならないんです。だからもう感覚で作るしかないですよね。私が実際に押してみて、一番ベストなパーツを、数日かけて選定しました。

インタビュー時に名人に持ってきていただいた製品サンプルは、輸送時の振動テストを受けて戻ってきたものだという。製品には玩具安全基準をクリアしたSTマークがつく(画像クリックで拡大)