キャラのかわいさだけではダメ、そこで“毒”を持たせた

 豆しばの生みの親となったのは、第5クリエーティブディレクション局コピーライターのキム・ソクウォン氏。キム氏がこれまでに携わってきたのは、ソニー銀行の新聞広告や、伊東美咲氏が出演したネスカフェの「匠」など。キャラクター制作の経験はなかったものの、これはチャンスだと思ったという。

 広告代理店のクリエーティブ部門というものは、まずはクライアントありきで考えなくてはならない。しかし、このプロジェクトでは、クライアントもいなければ、キャラクターの指定もない。ある意味得難いチャンスだった。豆しばというキャラクターを生み出すキーワードとなったのは、「かわいいけれど、ピリっとするもの」だ。

 アニメを見る人は、もはや子供だけではない。30分のアニメ番組の視聴者層を見ても、中学・高校年代の女性をターゲットにする必要があった。キャラクター戦国時代とも言える昨今の状況で、外観のかわいさだけでは目を止めてもらえない。「見る人が釘付けになるようなものを作りたい」(キム氏)という意図が、かわいい顔で毒を含んだ言葉をしゃべるという、豆しばのキャラクターを作り上げた。

 阿部氏はこのプロジェクトについて、ビジネスモデルとして面白いと考えたという。まず、全く商品が存在していない。サイト上で公開するために作成したアニメーションが、そのままサイト誘引のためのCMとして活用される。そのCMでは「プレゼントキャストのドガッチ」という「商品名」が強調されることなく、ただ最後のカットでさりげなくサイトのロゴが露出される程度。

 このCMの目的であるサイト誘引のための売り文句は、一切存在していない。いわば30秒の、“商品が欠落したアニメーションCM”なのだ。まず豆しばというキャラクターを浸透させ、それからビジネスを立ち上げていくという、通常とは逆のアプローチなのだ。

 通常のCMはクライアントのために作るもので、自由度は低い。どうしても、クライアントに受け入れられるものを出すことが要求される。制約なしに白紙から、一つのキャラクターを自分で作り出せる喜びは、「チャンスを貰えて本当にうれしかった」(キム氏)と、とても大きかったという。

 ちなみに豆しばの声を担当しているのは、当時5歳の女の子。プロの声優も含めて何パターンもテストをしたが、ちょっと異質感と、ギャップがある感じが面白いと採用になった。