短編アニメーションの楽しさを知ってほしい……

 ヨーロッパが優勢な中で健闘した加藤監督にもう一度登場していただきましょう。『つみきのいえ』は海面が上昇して人々が住処を追われるという設定で、観客は自ずと環境問題に思いを馳せます。しかし加藤監督は「僕が描きたかったのは、老人の人生」と言い切ります。「厳しい環境に老人は生きています。でも、どんな過酷な環境でも人は生きていかねばならない。そんなことを描きたかったのです」。これまでの加藤監督は構成や脚本も自ら手がけましたが、今回は脚本家の平田研也氏と組みました。脚本家は地球温暖化が問題になっているのだから、それを強く主張すべきとアドバイスしたそうです。しかし、シュールレアリズムと象徴主義に影響を受けた映像作家は、自らのイメージを貫きました。映像のエキスパートと脚本のプロが積み上げたストーリーラインのバランスが、本作の魅力を高めているのでしょう。

 短編といえども、普通の映画と変わらない創造と空想世界があります。アヌシーは、市場の熱気とともに長編に力を入れつつありますが、本領はやはり短編、しかもインディペンデント(独立)精神旺盛な作家たちのお祭りです。こうした短編アニメーションの世界に興味を持った人のために、フェスティバルを運営するCITIA(アヌシー映像都市)ではオンライン・アーカイブを整備しています。地元で短編アニメーション専門の有料ダウンロードサービスを展開するToondra.comと提携して、これまでの作品を視聴できるようにしました。1000本以上が、無料視聴できます。もし購入したければ、Toondra.comサイトから低額ダウンロードできる作品もあるようです。

 来年も6月にアヌシー・フェスティバルは開催されます。どんな才能が、ヨーロッパ一透明度の高い湖の岸辺で競うのか、いまから楽しみです。

6月14日の表彰式の様子。テーマ国インドに合わせて、ステージにはインド風。インドのマハラジャに扮した、セルジュ・ブロンベール芸術監督は像(右端)に乗って登場

受賞者が全員揃ったフィナーレ

セルジュ・ブロンベール芸術監督と加藤監督

受賞の喜びを噛みしめる、加藤久仁生監督(右)とロボットの大嶋美穂氏

(文/オフィスH・伊藤裕美)

海外アートアニメーション@トリウッド 2008秋 開催
~北欧ショートアニメーション特集~
~CAF 9 - カナダ・アニメーション・フェスティバル~

 ヨーロッパのアニメーションが熱い。なかでも北欧が、新しい製作拠点になりつつあります。長編劇場公開作品にヒットが続き、“北の新感覚=ノルディックなアニメーション”が人気の予感です。スウェーデンとフィンランドから、これから光りそうな新世代作家をフィーチャーします。

 そしてカナダからは、昨年度アカデミー賞最優秀短編アニメーションを受賞した「デンマークの詩人」が国内初の一般公開。

 全部で4プログラム26作品。さまざまな技法の海外の短編アニメーションをお見逃しなく!!

会期:2008年9月13日(土)~10月10日(金)
劇場:短編映画館 トリウッド http://homepage1.nifty.com/tollywood/
詳細情報:<オフィスH>(http://blogs.yahoo.co.jp/hiromi_ito2002jp/54850070.html