「多人数乗り車」という言葉に込められたスバルの個性

発表会場で森郁夫・富士重工業社長が行ったプレゼンでも、エクシーガに対して「ミニバン」という言葉は一切使わなかった(画像クリックで拡大)

 これまでスバル車を愛用してきたが、家族が増えたのに乗り換えるクルマがなかった。他社にはないメカニズムや走りの味を持った、個性的なクルマに乗ってみたい。そんな人々にとってエクシーガは、有力な選択肢になるだろう。

 冒頭で述べたが、富士重工はエクシーガを「ミニバン」とは呼ばず、あえて「多人数乗り車」という表現を使っている。発表会場で展示車の説明に当たっていた開発スタッフによれば、「今回の開発チームは誰ひとりとして、ミニバンを作っている意識はなかった」という。

 スバルの生命線は、低重心の水平対向エンジンや左右対称の4輪駆動システム、高性能シャシーに代表される「走りの良さ」だ。世界ラリー選手権(WRC)に参戦を続け、メーカーチャンピオンを3度勝ち取ったのも、それを証明するために違いない。

 日本の自動車市場で高いシェアを占めるミニバンは、北米市場に輸出するにはサイズが小さく、そのほかのエリアでもニーズが少ない。このため、ほとんどの車種は国内専売か、ごくわずかに輸出される程度。エクシーガも当面は、国内だけで販売する予定だ。

 限られた国内市場に多くのライバルがひしめく中で、スバルならではの個性を打ち出すにはどうするか。富士重工にとって「ミニバン」という言葉の響きは、これまで培ってきた独創性や走りを表現するテーマとして的確ではなく、既存ファンや潜在的なユーザーの心もつかめない、と判断したのではないか。それが、「多人数乗り車」という呼び方へのこだわりにつながったのだろう。

(文・写真/いとう洋介)

13年前の1995年、第31回東京モーターショーに3列シートのワゴンパッケージを採用した「α-EXIGA」を参考出展。エクシーガのコンセプト自体は、かなり以前から存在していた(画像クリックで拡大)

1997年の第32回東京モーターショーには、コンセプトカー「EXIGA」を出展。フロント・セカンドシートに加え、プラス2名の格納式サードシートを備えていた(画像クリックで拡大)

2007年の第40回東京モーターショーで公開した「EXIGA CONCEPT」が、今回の市販モデルのプロトタイプだ(画像クリックで拡大)

スバルの多人数乗り車の第一号は「ドミンゴ」。写真は1983年発売の初代モデルで、軽ワンボックスカーのサンバーをベースに1Lエンジンを搭載し、3列シートの7人乗り。ドミンゴには2代目モデルも存在し、1994年まで販売されていた(画像クリックで拡大)