この4月から日本テレビで始まった音楽番組『THE M』。放送時間が毎週火曜日の夜9時からと、日テレが18年ぶりにゴールデンタイム(19時~22時)で音楽番組を始めた、ということで話題になっている。巷(ちまた)では「音楽CDが売れない!」など、音楽業界の不振がトピックになっているが、実は音楽番組に限っては盛況で、今回『THE M』がスタートしたことで、在京の民放キー局のすべてがゴールデンタイムに音楽番組を持つことになる。“最後発”とも言える『THE M』がほかの音楽番組とどう違うのか、探ってみた。

●在京の民放キー局の音楽番組(ゴールデンタイム)
放送局 番組名 放送時間 司会者 公式サイト
日本テレビ THE M 毎週火曜日
21時~
石井竜也、酒井法子、劇団ひとり http://www.ntv.co.jp/the-m/
TBS うたばん 毎週木曜日
19時54分~
石橋貴明、中居正広 http://www.tbs.co.jp/utaban/
フジテレビ HEY!HEY!HEY! 毎週月曜日
20時~
ダウンタウン http://www.fujitv.co.jp/HEY/index2.html
テレビ朝日 ミュージックステーション 毎週金曜日
20時~
タモリ http://www.tv-asahi.co.jp/music/

音楽番組は歌を観せるもの

 メインの司会に「米米CLUB」のカールスモーキー石井こと石井竜也を据え、脇に永遠のアイドル酒井法子、さらに最近では小説家としても活躍している、お笑い芸人劇団ひとりを迎えて始まった日テレの音楽番組『THE M』(ディ・エムという発音が望ましいらしい)。毎回旬のアーティストをゲストに招き、その音楽人生などを深くヒモ解くことで各楽曲に対する理解を深める、そんなコンセプトを持った番組だ。

 4月22日に放送された第1回目のゲストは郷ひろみ。彼をリスペクトするゴスペラーズや、デビュー当時から郷ひろみのことをよく知っている樹木希林などが出演し番組を盛り上げた。その内容はゴールデンタイムの音楽番組が全盛だった1970年代を彷彿(ほうふつ)とさせる王道の「音楽バラエティ」だ。

 今回の『THE M』は、『ザ・トップテン』とその後をついで放送された『歌のトップテン』から数えれば18年ぶりだが、日テレは『トップテン』以降も『速報!歌の大辞テン』『ウタワラ』など、ゴールデンタイムの人気音楽番組を少なからず放送している。ところが新聞などを見ると、確かに「18年ぶり」という表現が目立つ。

 「うーん、18年ぶりのゴールデンの音楽番組ねぇ、その気合いで臨んでいます。…大丈夫、そう言ってもらってOKですよ」

 そう答えたのは番組プロデューサーの南波昌人氏。『トップテン』以来18年間、音楽番組がゼロだったわけではない。しかし、大衆文化としての音楽と、ガップリ四つに組んで音楽番組としての真価を問う。そんな心意気を含めた“18年ぶり”ということだ。

日本テレビ制作局の南波昌人氏

 南波氏は「音楽番組は音楽を観せてナンボ」というのが持論。『ザ・ベストテン』など1970年代の後半から80年代の中ごろまで、歌謡曲ブームを支えた音楽番組はどれもストレートに音楽を観せていた。ゲストを呼び込んで、トークもそこそこに前奏がはじまり、ステージではすでにスクールメイツの女の子たちが踊りはじめている。慌ててステージに駆け上がりマイクを握るミュージシャン。毎週その繰り返しなのだが、あのころは飽きもせず観続ける視聴者がいた。

 そうした方法論の賞味期限が切れたわけではないのだろうが、今視聴率を稼いでいる音楽番組はトークが中心だ。しかし、トークが苦手なミュージシャンも多いし、彼らとしてもトークの巧みさを見せるのが本望ではないことも多いだろう。そもそも視聴者は音楽番組に“面白トーク”をどこまで望んでいるのか? 本当のところは分からない。

「ミュージシャンが出たいと思える番組と、視聴者が観たいと思う番組の微妙な接点を探っているんです。『THE M』はそういう番組にしていきたい」と南波さんは言う。ミュージシャンがいて演奏する音楽がある。番組の流れはいかに多くの視聴者にミュージシャンが引っさげてきた音楽を「観せるか」である。

「トークが面白い音楽番組は多いが、演奏中の視聴率が下がったのでは意味がない」とは南波氏の言葉。

 この言葉を具現化するため、演奏から演奏までのトーク部分は楽曲への興味をそそる構成にしている。例えば第4回の放送、ゲストのトータス松本さんが2006年発表の名曲『サムライソウル』を歌ったのだが、直前のトークではトータス松本の音楽人生の挫折や立ち直り、そして『サムライソウル』というキーワードが彼の人生にどれだけの意味を持つのかを視聴者に丁寧に観せてくれた。演奏への助走としては申し分ない内容だ。