3月28日、第1回「マンガ大賞」受賞作に石塚真一『岳』(小学館)が選ばれた。まだ耳慣れないこの賞だが、いわゆる「マンガ読み」がおすすめを選ぶというもの。運営するのは「マンガ大賞」実行委員会で、書店のマンガ担当者をはじめ、マンガ好きの有志が顔をそろえている。

書店の店頭風景。「マンガ大賞」の公式ページからポップやポスターなど、拡販材料がダウンロードできる

 対象となるマンガは、07年に単行本が出版され、最大巻数が8巻までの作品。選考には、実行委員が直接声をかけたという書店員からブロガー、ミュージシャンまで、各界のマンガ好きからなる選考委員(有志)約80人が参加した。

 「マンガ大賞」の最大の特徴は、「小学館漫画賞」や「講談社漫画賞」といったほかのマンガ賞と違い、出版社主催ではないところ。実行委員を務める吉田尚記氏は、賞を立ち上げた経緯をこう話す。

 「よく行く書店のマンガ担当の方と話をしているときに、そういえばマンガ界には版元主催ではない賞が少ないですよね、という話になったんです。いまマンガって、年間1万点以上が刊行されている。僕たちは普段からマンガを読んでいるので、新刊が出るタイミングなんかが分かりますが、そうじゃない場合、書店でマンガを選ぶのってすごく難しい。ならば、マンガ選びの助けになるような賞を自分たちで作りませんか、と」

いま読むべき“旬”な作品を

1 『岳』
石塚真一/小学館
日本アルプスで「山岳救助隊ボランティア」として活動する島崎三歩。美しさと厳しさを併せ持つ山を舞台に、どんな非常事態でも冷静さを失わず救助活動する三歩と、山を訪れる人々の交流を描く(1~6巻)

 同じく愛好家が選ぶ文学賞として、書籍を対象に書店員が選ぶ「本屋大賞」がある。今年で5回目を迎えるが、「全国書店員が選んだいちばん! 売りたい本」のコピーどおり、受賞作がベストセラーになることで年々注目度が高まっている。「マンガ大賞」も、受賞作の売り上げを伸ばすことが狙いとしてあるのだろうか。

 「大賞を受賞した『岳』は現時点ですでに累計100万部を超えている作品です。これが受賞でさらに100万部伸びるかといったら、そんなことはない。文芸書と違って、マンガは巻数が進んでいきます。作品が面白いときに、面白いとすすめたい。売ることを目指すというよりは、そうした思いのほうが強いです」(実行委員・田中香織氏)

 しかしながら、選考方法については、「やっぱりよく考えられている」(前出・田中氏)ことから、「本屋大賞」をロールモデルにしているという。

 「今回、ノミネート作品のなかに未読のものが3作品あったんです。選考の過程でそれらを読んだのですが、こんなに面白い作品を読まずに死ななくてよかったと(笑)」(前出・吉田氏)

 読者目線で選出される「マンガ大賞」は、「面白いマンガを読みたいけど、たくさんありすぎて分からない」人にとって、大きな手助けになるに違いない。

最終選考ノミネート作品ランキング  ※1位は写真左上
2 『よつばと!』(1~7巻)
あずまきよひこ/メディアワークス
とある町に引っ越してきた、元気な5歳の女の子「よつば」と「とーちゃん」親子の日常。
3 『蝉時雨のやむ頃』(1巻)
吉田秋生/小学館
鎌倉で暮らす三姉妹のもとに、腹違いの中学生の妹がやってきて…。家族のきずなの物語。
3 『フラワー・オブ・ライフ』(全4巻)
よしながふみ/新書館
白血病を克服し、約1年遅れで高校に入学した花園春太郎を主人公にした学園ドラマ。
5 『君に届け』(1~6巻)
椎名軽穂/集英社
黒髪のロングヘアゆえ、「貞子」と呼ばれる女子高生・黒沼爽子の友情と恋を描いた少女マンガ。
6 『大奥』(1~3巻)
よしながふみ/白泉社
男だけが死ぬ疫病に侵された江戸では、女将軍のもと3000人の美男が大奥に囲われていた…。
7 『皇国の守護者』(全5巻)
作・佐藤大輔 画・伊藤 悠/集英社
人と龍が共存する世界を舞台に、「皇国」と「帝国」の対立を描いたSF戦記。
8 『とめはねっ!』(1~3巻)
河合克敏/小学館
帰国子女の男子高校生がひょんなことから入部した書道部で、書に目覚めていく…。
9 『もやしもん』(1~6巻)
石川雅之/講談社
農業大学を舞台に、菌が目に見える特殊能力を持った主人公と周囲のドタバタを描く。
10 『夏目友人帳』(1~5巻)
緑川ゆき/白泉社
妖怪が見える高校生・夏目貴志は、祖母の遺品で妖怪の名が書かれた「友人帳」を手にする。
11 『ひまわりっ』(1~7巻)
東村アキコ/講談社
兼業マンガ家のOL・アキコと変わり者の父・健一が巻き起こす笑いを描くギャグマンガ。
12 『きのう何食べた?』(1巻)
よしながふみ/講談社
ゲイのカップルの日常を「食」を通して描く。タケノコの煮物など登場料理のレシピも掲載。

(文/日経エンタテインメント!編集部、写真/工藤 哲)

※この記事は日経エンタテインメント!(6月号)より転載しました。