今年のアカデミー賞直前のこと。『フィクサー』で主演男優賞にノミネートされたジョージ・クルーニーは、自分が主演男優賞を受賞する可能性についてたずねられると「受賞? ダニエルがいるから無理だよ」と微笑んで答えた。ダニエルとは『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(2008年)で、主演を務めたダニエル・デイ=ルイスのこと。クルーニーの予想どおり、主演男優賞は、狂気に取りつかれた石油王を演じた、ダニエルが獲得した。

 辛口の映画評論家だけでなく、クルーニーやディカプリオなどの俳優からも高い評価と尊敬を受け続けている、ダニエル・デイ=ルイスとは一体どういう人物なのだろうか。

『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』
(監督:ポール・トーマス・アンダーソン/出演:ダニエル・デイ=ルイスほか/配給:ウォルト ディズニー スタジオ モーション ピクチャーズ ジャパン/シャンテシネ他 2008年近日ロードショー/公式サイト:http://www.movies.co.jp/therewillbeblood/
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 彼のすごさは演技だけでなく、その経歴にもある。

 まず生い立ちがすごい。英国生まれの彼の父は英国王室の桂冠詩人(政府や王室から公式に任命された詩人のこと)セシル・デイ=ルイス。母は女優のジル・バルコン。母方の祖父は初期のヒッチコック映画などのサスペンス作品で名を馳せた名プロデューサー、マイケル・バルコン。マイケルは1963年に『トム・ジョーンズの華麗な冒険』でアカデミー作品賞を受賞しており、ダニエルは筋金入りの芸能界サラブレッドと言える。

 幼少のころは、普通の学校になじめず、祖父の薦めで演劇学校に通いはじめる。学校に通いながら舞台俳優として全英を巡る生活をし、わずか14歳のときに『日曜日は別れのとき』(1971年・日本未公開)でスクリーンデビューを果たす。このときはまだクレジットなしの端役だった。