1973年、アメリカのシカゴで81歳の老人が孤独の中で息を引き取った。彼には身寄りが無く、半生を過ごしたアパートの大家、ネイソン・ラーナーが唯一の知人だった。大家は彼の死後、受け取り手のない遺品整理のために、老人の部屋に足を踏み入れ、初めてとんでもない事実を知る。

 部屋には、異常な光景が広がっており、大家は驚愕した。そこには、老人の手による1万5000ページにも及ぶ大長編小説と、小説にまつわる数百点もの大小様々な絵画が残されていた。小説には『非現実の王国における、ヴィヴィアンガールズの物語 あるいは子供奴隷の反乱に起因するグランデコ対アンジェリニアン戦争の嵐の物語』と題されていた。

『非現実の王国で ヘンリー・ダーガーの謎』
(監督:ジェシカ・ユー/ナレーション:ダコタ・ファニング/配給:トルネード・フィルム/3月29日(土) シネマライズほか全国ロードショー/公式サイト:http://www.henry-darger.com/
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 大長編小説の内容は、“アンジェリニアン”という子供たちだけの王国と、その王国を侵略する「子供奴隷制度」を持つ“グランデコ”のほかに、グランデコに抵抗すべく立ち上がった7人の無垢なる少女たち「ヴィヴィアンガールズ」による幾年にも及ぶ壮絶な闘いの記録である。

 戦争ものファンタジーとでも呼びうる小説だが、物語と絵画はメルヘンチックな生やさしいものではない。少女たちが陽気にはしゃぐ場面が描かれたかと思えば、邪悪なグランデコが子供たちを処刑する場面あり、何百万もの軍隊が血みどろに闘う場面ありと、相反する雰囲気に包まれている。小説の各シーンを再現した絵画と相まって強烈な印象を残す。多くの場合、そこで描かれる少女たちは裸で、しかも小さな男性器をつけているのだ!