では、何が180円スニーカー復活の決め手となったのか?

 それは、結局、同社が求める条件で生産できる新しい取引先を見つけることができたことが最も大きかったようだ。最初の180円スニーカーを作る前には、仕入れ担当が「工場が見つかるまで帰ってくるな」と全く当てのないまま中国に送り出され、現地で調査や飛び込みの交渉を重ねて取引工場を探し出したという。ちなみに、超低価格スニーカー開発の初期段階では、当時の牛丼一杯と同じ280円で企画が進んでいた。しかし、「牛丼と同じじゃダメだ。もっと安く」という創業者の平木勝会長の一声で、180円に決定したのだとか。

「これ以上安く靴を作ることはできない、180円は靴の“絶対安値”なんです」(堀内部長)

 この“絶対安値”を守るために、改めて新しい工場を求めて中国各地を訪ね歩いた。旧180円スニーカーでは3社に振り分けていたものを1社に集約、さらに、その工場ラインの稼働率が低い時期に生産できるように指定して発注するなどの工夫もした。そうして契約した新しい取引先について、同社はこれまでのところ「内陸奥地の工場」としか明らかにしていない。今回、「もう少し詳しく教えてほしい」と粘ると、堀内部長は少しの間、席を外した。社内の誰かに相談しに行ったようだった。戻ってきた堀内部長から出た回答は……「北の方」、だけだった。あくまで、取引先はトップシークレットのようだ。

ヒラキ・通信販売事業部長の堀内秀樹氏(画像クリックで拡大)

 しかし、工場がわかったところで、ヒラキのマネをして180円スニーカーを売り出すことは簡単ではない。ヒラキが破格の安値で供給できるのも、企画・開発から生産、販売まですべて自社でこなし、中間業者を一切排除していることが根本にある。このやり方は大量の在庫を自ら引き受けることになるから、売れればいいが、売れなかったときのリスクは大きい。

 そんなリスクを引き受けながら作っている180円スニーカーも、用意した25万足を全部売り切ったところで、ほとんど儲けはないという。ただ、ヒラキの通販の利用者の平均的な1回の購入価格は配送料が無料になる5000円を少し越えた6000円程度。180円スニーカーだけを購入すれば、配送費に840円もかかってしまう。これでは損に思えてしまうから、他の商品と併せて購入する。そこで利益を出すという仕組みだ。

 靴を中心に通販を展開するヒラキにとっては、「靴は履いてみなければわからない」という先入観をいかにくつがえしていくのかが、常に課題。180円スニーカーはそこで大きな役割を果たす。「180円なら試してみようか」と購入した客が、品質に満足して次回はほかの靴も購入する。そのきっかけを作る靴。だからこそ、180円でも品質はおろそかにできない。

 さらに今回、同社は180円の鹿の子半袖ポロシャツも同時に売り出した。これもまた、2005年に発売して好評だったものを、顧客の要望に応えて復活させたという。スニーカー、ポロシャツとくると、次は何を180円で売り出してくれるのかと期待してしまうところだが、「当面、新しい180円商品の計画はありません」との回答。「でも、絶対安値にはこだわっていきますよ」と話す堀内部長は、また何か度肝を抜くようなことを企らんでいるかのようだった。

180円の鹿の子ポロシャツ(画像クリックで拡大)

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(文/上保文則)