読者から寄せられる提案、お叱り

 編集部には、読者から、この言葉を収録してはどうか、という提案が日常的に寄せられる。中には、編集者と親しくなるほどの常連さんもいるという。

「2ちゃんねる語など、自分が普段から親しんでいる言葉を載せたいと思う方は多いんです。中には、ここ10年来の付き合いの方もおられますよ」と上野さん。「そういうご提案が役に立つ事が多くて、新しい言葉を収録出来たりもするんです。そんな読者との繋がりが、今の広辞苑の信用にも繋がっていると思っています」(上野さん)

 実際、総売り上げ1100万部で、辞書の代名詞的存在になっている広辞苑。初版の頃から変わらぬ洋画家安井曽太郎氏による装丁のビジュアルイメージも、辞書そのものだ。それだけに、つい「広辞苑」に収録されれば、それは日本語として公に認知されたのだ、と思ってしまう。実際に、第五版で「茶髪」という言葉を収録した際、「広辞苑は若者が髪を染めることを認めるのか」というクレームもあった。

「それは逆なんです。よく誤解されますが、広辞苑が日本語を認めているのではなく、世間が日本語として認めた言葉を広辞苑が収録しているんです」(上野さん)

 20年前に既にCD-ROM版を発売しているなど、クラシックな存在でありながら、常に辞書の先陣を切ってきた広辞苑。この機会に見直してみると、新たな発見がありそうだ。

(文/納富廉邦 )