2007年はCD売り上げの低迷が止まらなかったが、ネットを利用した楽曲販売が伸びを見せるなど、流通方法は目覚しく変化。さらにネット経由、もしくはネットで生み出された楽曲が、従来では予想できない方法でヒットするなど、CDパッケージのみに依存しない動きがさらに強まった。これらを踏まえ、2007年の音楽業界を一言に集約すると、“ボーダー(境界)の崩壊”といえる。既に挙げた店舗販売とネット販売のボーダーにはじまり、パッケージとノンパッケージ、都市と地方、メジャーとインディーズ、素人とプロなど、さまざまなボーダーに激震が感じられた年だった。

従来の枠を壊した楽曲販売、流通方法を確立

 楽曲の販売、流通方法のボーダー崩壊は、その最たる例だろう。これについては、海外の動きが常に先行している。なかでも、レディオヘッドがニューアルバム『IN RAINBOWS』をネット配信し、その価格を購入者が自由に設定できるようにしたことは話題を集めた(関連記事)。“もうレコード会社なんていらない?”と音楽業界の人間はため息をついたものだ。さらに、プリンスがニューアルバム『Planet Earth』を英国の新聞に無料で添付したり、マドンナがレコード会社を離れイベント興行会社と契約(関連記事)したことなども、従来の業界の仕組みをブチ壊す飛び抜けた動きだ。そんな欧米での動きに呼応し、日本では浜崎あゆみが12月にシングル『Together When...』をデジタル配信のみで発売した。この出来事は、日本の音楽業界に、大きな節目を創り出したといえる。

■関連情報

素人とプロとの境目があいまいに

クリプトン・フューチャー・メディアの「キャラクターボーカルシリーズ01 初音ミク」。歌詞と音階を入力すると、バーチャルアイドル初音ミクが歌ってくれる。実売価格1万5750円前後(画像クリックで拡大)

 自分の思い通りに歌わせることができるバーチャルアイドル「初音ミク」のブームは事件だった(関連記事)。初音ミクとは、8月に発売されたパソコンソフト。歌詞と音階を入力することで、バーチャルアイドル“初音ミク”が、まるで人間のように歌ってくれる。ネット上で初音ミクを使用したオリジナル曲やカバー曲が多数アップされるなど、発売直後から大きな盛り上がりをみせた。通常の音楽ランキングではカウントされない分野だが、ネット上ではかなりのアクションを記録。初音ミクブームは、一般ユーザーがプロの領域に入りこみ、“素人”とプロとのボーダーを壊しつつあることを体現している。また、かつて何度かトライされたバーチャルアイドルが、遂に軌道に乗ったという見方もできるだろう。

 無名アーティストのメジャーシーンでのブレイクにも、ネットは大きな役割を果たした。2006年から話題になりはじめたネットアニメ「やわらか戦車」は完全ブレイク。今年は、リミックス&カバーアルバム『やわらか戦車 -REWORKS-』を9月に発売したほか、鉄腕アトムとのコラボ作品「やわらかアトム」を発表するなど華々しく活動した。さらに、つい2年前まで、ほとんど無名だった作者であるラレコ氏は、今年12月、NHKのトーク番組「トップランナー」への出演も果たしている。ここでポイントなのは、音楽的には素人であるラレコ氏自作自演による曲がキャッチーで、それが映像のヒットに寄与していること。このように映像作家が、パソコン上で音楽を作り、それが無視できない水準になっている例は増えており、プロの音楽家とのボーダーを壊す例として挙げられる。