ヘキサゴン以外の番組にも進出
“おバカ”タレントは好感度が高い!

 そもそも、『クイズ!ヘキサゴン』は深夜番組としてスタート。クイズ番組というよりは心理ゲームの側面が強かった。神原氏によると、それが今の形になったのは偶然だと言う。ゲームの企画として完成形が出来ていた番組に限界を感じ、一度スペシャルで違うことをやってみたいと提案したときに、島田紳助から「バカから賢い人まで一斉に出られるクイズ番組ってあまりないよね。そういう人間を集めてテストでチーム分けをし、階段席に並べて、早押しクイズとかやったら面白いんちゃう」という話が具体的に出た。では早速やりましょうとやってみたら結果的に今のようになったそうだ。“おバカ”キャラは初期のころは、村上ショージ、山田花子などの芸人が中心だったが、徐々に芸人ではない若槻千夏、大沢あかね、ほしのあき、熊田曜子のようなグラビアアイドルが入ってくるようになった。

 番組を現在の形にしてから、2008年1月の放送で100回。今注目を浴びているタレントだけでなく、交代でさまざまな人が“おバカ”として活躍してきた結果がようやく今出ているようだ。「里田まいが番組に出てから今年の夏でちょうど1年なんです。テレビ番組が浸透するにはやっぱり時間がかかる。たくさんタネをまいておいて、それが開くのが1年後だったりするのは普通のこと」(神原氏)。今の人気を一過性のブームに終わらず定着させていくこと、『関口宏の東京フレンドパークII』(TBS系)のように何年も続く番組を目指すことがこれからの課題のようだ。

 『クイズ!ヘキサゴンII』のブレイクを横目で見ていた他局の制作者も少し前から徐々に“おバカ”キャラに注目し始めていた。多ジャンルの出演者が集まる数少ないトーク番組『踊る!さんま御殿!! 』(日本テレビ系・毎週火曜19時58分~)も“おバカ”キャラに注目した番組のひとつ。ときどき開催する、100~200人単位の番組出演者オーディションで、今年に入ってから見つけたのがスザンヌだ。ここ最近のオーディションでは、なかなかいい人がいないと思っていた中で、輝いていたのがスザンヌだった。「特技は電車の乗り継ぎです」という会話の面白さに、スタッフ満場一致で出演してもらおうということになったという。

 『踊る!さんま御殿!! 』の北條伸樹プロデューサーは、“おバカ”タレントの魅力を「予想がつかない、お笑い芸人には思いつかないような面白さ」と語る。「計算して面白い芸人さんとは違って、あの方々はそこまで計算していないですからね。でも反射神経がいい。さんまさんに振られても必ず何か返して、それが面白い。狙った面白さじゃない、今までなかったタイプ。今までだとグラビアアイドルとかが、芸人さんとは違う面白い人だったんだけど、それに次ぐ第三勢力ですね」(北條氏)。北條氏のイチ押しで番組に出演し、ブレイクのきっかけを作ったIKKO、強烈なしゃべりでイメージを変えたバイオリニストの高嶋ちさ子など、人気者を輩出することが多い『踊る!さんま御殿』にも、“おバカキャラ”が定期的に出演するようになってきている。

さんま、紳助など大物が
“おバカ”タレントを引き立てる

 その一方で、計算がないからこそ面白い“おバカ”キャラは、計算して自らその良さを売り込むことが難しい。この点について、神原氏、北條氏がともに彼らのブレイクの重要な要素として挙げたのが、明石家さんま、島田紳助という大物の存在だ。「さんまさんの力も大きいですよ。彼らが反応しやすい話題、つまりバレーで言えば打ちやすいトスを出している。紳助さんとか、久本さんとかも、受けやすいような投げかけをしていますよね。芸人さんと違って自分で話を落とすことはできないので、さんまさんや紳助さんのような人がいて成り立つんだと思います」(北條氏)。

 「島田紳助という司会者が“おバカ”キャラのいじり方の正解例をテレビではっきりと見せた。こうやってこの子たちの持ち味を引き出せば、テレビとして面白くなるんだと。紳助さんは新しいキャラクターをいじる方向性を作る天才。自分でも新キャラを見つけてくるくらい」(神原氏)。今までのクイズ番組では出演者が間違ったシーンをそう長く放送することななかった。ところが、島田紳助は間違えたことから話を広げるという手法を『クイズ!ヘキサゴン』で示した。これによって、そういう演出方法をしてもいいんだ、ということが分かった。一方、“おバカ”タレント側も、島田紳助が編み出した演出方法(=間違ったことを笑われる)に拒否反応を示さない。この点は、他局の制作者に安心感を与え、“おバカ”キャラがほかの番組に進出する要因になった。

 “おバカ”タレントは、どんなに恥ずかしい珍回答、とんちんかんな受け答えでも、明るく受け止め、明るく返す。加えて見た目のかわいさ、カッコよさ、さわやかさもあるので、タレントとしての好感度も高い。北條氏は「嫌味が無いし、狙っていない、計算していない感じが視聴者にも伝わる。そして可愛げがある。同世代には嫌味がないところが好かれるし、少し上の人からは温かく見守ってもらえる」と彼らの好感度が高い理由を分析する。実際“おバカ”タレントは、優しくて気が使えるので、スタッフや共演者から可愛がられているようだ。神原氏は、番組が好調の理由として「出演者の仲の良さ」を挙げている。“おバカ”キャラだけでなく、波田陽区、アンガールズ、山本モナなど出演者同士のつながりがきちっとできていて、それが番組に良い影響を与えているという。ツッコミにも愛情があり、安心して見ていられるファミリー感が、番組を支える力になっている。