『SCHOOL OF LOCK!』オフィシャルサイトでは、同番組に関する最新の情報を掲載している。放送は、月~木曜 22時~23時55分、金曜 22時~22時55分、23時30分~23時55分。TOKYO FMほかJFN系38局ネットで放送中(画像クリックで拡大)

 「ネットの広告がラジオ広告を上回った」と電通が発表したのは2005年2月のこと。カルトな支持を得る番組以外、媒体としての力が弱いと思われていたラジオの中で、中高生を中心に圧倒的支持を得ている番組がある。

 TOKYO FMの『SCHOOL OF LOCK!』と題されたこの番組は、2005年10月にスタート。“ラジオの中の学校”という設定で放送されており、“起立・礼・叫べ~!”を合言葉に、毎晩、“生放送教室”が始まる。番組では「やましげ校長」と「やしろ教頭」という2人のパーソナリティーのほか、チャットモンチーやYUI、ASIAN KUNG-FU GENERATIONらアーティストが“講師”としてレギュラー出演したり、新垣結衣、榮倉奈々といった女性タレントらが“女子クラス”を持ったりしている。

 番組サイトへのアクセス数は、月間5000万PVを誇り、時には1日に2万通を超えるメールが届く日もあるという。今年の10月に大阪、福岡、東京の3都市で開催された“番組の学園祭”イベント「SCHOOL OF LOCK! LIVE TOUR YOUNG FLAG」には、番組に縁の深い人気アーティストが多数出演し、3会場すべてのチケットが即完売している。今やレコード会社の邦楽担当で『SCHOOL OF LOCK!』を知らない者はいないほどの状況になった。10月31日に発表された第3回日本放送文化大賞でもラジオ部門グランプリを受賞した。

 番組構成は、携帯電話のメールを使ってリアルタイムに意見を募集したり、中高生の悩みを柱にパーソナリティーとリスナーがコミュニケーションするという、従来からある若年層向け番組のむしろ王道と呼ぶべきもの。では『SCHOOL OF LOCK!』が爆発的に支持される理由は、どこにあるのだろうか?

 番組の発案者であり、チーフプロデューサーを務める森田 太氏は「若い子にラジオが届かないっていうのは都市伝説です(笑)。今は弱い子が多い。その弱さをちゃんと理解して、強くなるための過程を言葉にしていること、そういう音楽を届けていることが、若い子の心をつかんでいるんだと思います」と語る。

 番組では、リスナーの携帯電話やパソコンから投稿されたメール、掲示板の書き込みを受け、その内容について番組中に電話でパーソナリティーとリスナーが語り合う形で進行することが多い。恋愛話もあれば、いじめなどのヘビーな内容もある。その放送上での電話のやり取りを聞いて、サイトの掲示板には、書き込みが殺到する。「携帯電話を使えばヒットすると思ったからやっているのではない。リスナーが普段使い馴染んでいるネットというツールに、SCHOOL OF LOCK!という“血”を流してあげているんです」(森田氏)。ラジオ・携帯電話・Webが三位一体となった世界ができあがっている。

 また、番組で流れる曲の歌詞を読めば、そこには番組と同じような価値観、世界観が存在するのが分かる。「時代に合っているからチョイスしたというわけではない。むしろ、僕は雑誌もテレビも見ないですから。SCHOOL OF LOCK! という“バンド”のメンバーとしてふさわしい人、サウンドトラックとして鳴っていてほしい音楽をただ選んでいるだけなんです」(森田氏)。ナイス橋本、RADWIMPS、ジンなど、この番組からブレイクしたアーティストも少なくない。

 単にネットツールを駆使すること、人気者を出演させることに奔走することよりも、“弱さを認めつつ強くなりたい”という今の中高生の心理を的確につかんだこと、それに徹底的に寄り添い、世界観の統一にこだわって番組の内容を大事にしたことが、多くのリスナーを引きつける結果を生んだ。さらに森田氏は、「売れるものがいいものだった時代は終わった」と言い放つ。「その代わり、売れていなくても“いいもの”にはちゃんとみんな共鳴する。この番組は、中高生のぽっかり空いている世界にうまくはまってくれたピースなんじゃないかな。テレビやゲーム、DVDじゃ埋められないものを見つけたとき、彼らの中にはドキドキワクワク感が生まれる。それを生み出せることを基準に企画も出演者も選んでいます」(森田氏)

 誰よりも作り手がまず面白がる。そんな作り手の“周波数”とリスナーが見事にシンクロした極めて幸福な例が『SCHOOL OF LOCK!』と言えるだろう。そして、「若者がラジオを聴く時代はもう終わり」といった先入観から距離を置いたことも、この幸運を招く要因になったとも言えそうだ。

(文/原田 星;Spoo! inc.