『ヘアスプレー』
ぽっちゃり系の主人公、トレーシー(ニッキー・ブロンスキー)が人気番組のオーデイションに挑戦。夢を実現させるポジティブストーリー。ジョン・トラヴォルタ(左)の女装も話題に。(監督:アダム・シャンクマン/出演:ジョン・トラヴォルタ、ザック・エフロン、ニッキー・ブロンスキーほか/配給:ギャガ・コミュニケーションズ/丸の内プラゼールほか全国松竹・東急系にて公開中)(C) MMVII New Line Productions, Inc. All Rights Reserved(画像クリックで拡大)

 10月4日、東京・渋谷のC.C.レモンホール(旧・渋谷公会堂)--。カラフルなワンピースやふわふわスカートといったガーリーな衣装に身を包み、髪を巻いて、カチューシャをつけた10代の少女が大勢集まり、周辺は異様な熱気に包まれた。道行くオジサンたちは「仮装パーティーか?」と思ったかもしれないが、これは1960年代アメリカ風のファッション。

 彼女たちは、ミュージカル映画『ヘアスプレー』のジャパンプレミアのために集まった観客だった。『ヘアスプレー』は、60年代のボルチモアを舞台に、テレビの人気ショー番組への出演を夢見るぽっちゃり系の少女が主人公のコメディー。ジョン・トラヴォルタが女装して、主人公の母親役を演じていることでも話題を呼んでいる。

 「いきなり歌ったり踊ったりするのについていけない」などと言われ、一部のファンのものとみられていたミュージカル映画だが、最近は人気が急上昇している。『ヘアスプレー』は7月に全米で公開されて大ヒット。過去30年間に全米公開されたミュージカル映画としては『グリース』(1978年)『シカゴ』(2002年)に次いで、興行収入ランキングで歴代3位にランクインした。日本での興行収入を見ても、『シカゴ』(2003年)が35億円、『オペラ座の怪人』(2005年)が42億円をあげて、年間興行成績のトップ10に入るクラスの大ヒットとなったのは記憶に新しい。今年の春にはビヨンセが主演した『ドリームガールズ』が20億円のヒット。ダイアナ・ロスがいた3人組黒人女性グループ、シュープリームスの実話を基にした音楽業界内幕もので、『バベル』の菊地凜子を抑えて、ジェニファー・ハドソンがアカデミー助演女優賞を獲得したことでも脚光を浴びた。

 来年以降も話題作が目白押しだ。来年1月には、ジョニー・デップとティム・バートン監督のコンビによる『スウィーニー・トッド』が日本で公開される。連続殺人鬼の理髪師を描く異色のミュージカルだ。アバのヒット曲が満載のブロードウェイのヒット作『マンマ・ミーア!』は、メリル・ストリープとピアース・プロスナンの主演で来年以降に公開が予定されている。『シカゴ』のキャサリン・ゼタ・ジョーンズとロブ・マーシャルが、映画監督の成功と破滅を描いたミュージカル『ナイン』の映画化で再びコンビを組むことも決まった。

 60年代70年代にはミュージカル映画が盛んにつくられたが、80年代に入って激減。90年代にはほとんど姿を消していた。それが、ここにきて製作本数が増加。テレビ映画『ハイスクール・ミュージカル』の大ヒット現象まで含めると、まさにミュージカル映画復活といえる勢いをみせている。

 なぜ今、ミュージカル映画が人気なのだろうか。『ヘアスプレー』のアダム・シャンクマン監督は「多くの人がミュージカルのリバイバルを望んでいるのは、このジャンルが喜びにあふれ、きわめて映画的だからでしょう。観客はもう戦争映画には飽き飽きしているし、現実の社会より<もっとハッピーな世界に逃避したい>という思いがあるのではないか」と言う。