20代を中心に大人気の動画共有サイト「ニコニコ動画」が、吉本興業やエイベックスなど名だたるコンテンツホルダーとの提携を発表した。これでユーザーが投稿した動画だけでなく、お笑い芸人やアーティストなどの権利映像の配信も大幅に強化できる。ユーザー数も順調に伸びており、参入からわずか10カ月で登録会員数は300万人を突破し、有料会員数も8万人を超えるなど、すでに国内では「Youtube」と肩を並べた。さらに投稿された動画から「ねこ鍋」がDVD化されるなど、今年のネット界の話題をさらったニコニコ動画。その急成長の理由を整理した。

 ニコニコ動画が、Youtubeなどこれまでの動画共有サイトと大きく違う点が

  ・リアルタイムコメント機能

  ・『2ちゃんねる』の流れを引き継いだ自由な風潮

  ・徹底したユーザビリティに対する意識

の3つである。

 ニコニコ動画の最大の特長であり、Youtubeとの決定的な違いがリアルタイムコメント機能だ。これは、動画を見ながら「面白い」「すごい」などのコメントをキーボードから入力すると、画面上にそのコメントがそのまま表示されるもの。後から同じ動画を見たユーザーでも同じタイミングで、その投稿されたコメントを見られる。これが、一人で動画を見ているにもかかわらず、みんなでテレビを見ながら感想を言い合うのと同じ楽しさを産み出す。

ニコニコ動画の動画再生画面。再生画面の上部に表示されているのがコメント。「今、こんなに多くの人がこれを見ているの?」と勘違いするほど、みんなで動画を楽しむという雰囲気を演出してくれる(画像クリックで拡大)

 この機能の原点は、大型掲示板「2ちゃんねる」の“実況スレ”にある。“実況スレ”はテレビを見ながら、リアルタイムで感想を掲示板に書き込むスレッドで、同じ時間を仲間で共有する楽しさがある。ニコニコ動画の場合は、同じ時刻に同じユーザーが、同じ動画を見るわけではないが、前述したように時間を超えて感想を共有できる点が画期的と言える。

 競い合うように面白い動画が投稿されるのもニコニコ動画の強み。ニワンゴの取締役には「2ちゃんねる」の管理人である西村博之氏が名を連ねているが、同氏の参加によって、2ちゃんねるの風潮が良い形で引き継がれたのだろう。それはユーザー同士が常にユーモアを競い合うという精神である。2ちゃんねるのユーザーが参加して、その雰囲気が持ち込まれたことにより、動画制作者に「面白い動画を投稿すれば、きっと反応してくれる」という一種独特の安心感を与えている。

 もちろん、先述のリアルタイムコメント機能は、動画製作者のやる気を引き出す作用もある。投稿した動画に対して、直接視聴者の反応を見ることができるのは、製作者にとってうれしいことである。見知らぬユーザーであっても、楽しんでもらったり、ほめられたりすれば、次の動画製作へのモチベーションにつながる。右肩上がりに増える投稿動画数を見ていると、そんな好循環ができているのが分かる。

 目立たないが、ニコニコ動画の使い勝手もユーザーを引き付ける要因になっている。サービスを開始するに当たり、最も力を入れた点は「すべてのサービスや機能が直感的に理解できること」(ニワンゴ広報)だったという。ニコニコ動画のデザイナーは「テーマカラーや主張の強いデザインを避け、白黒基調の配色で情報の見やすさを優先し、ユーザーが親しみが持てるように手書き風フォントを採用しました」と語る。日本産業デザイン振興会がこのほど発表した「グッドデザイン賞」の「コミュニケーションデザイン」部門を「ニコニコ動画」が受賞している。リアルタイムコメント機能が主な評価点だが、その見やすさ、使いやすさも評価された結果だ。

 10月10日、吉本興業やエイベックスとの提携と同時に発表したのが、“ニコンドライフ構想”である。ニコンドライフのコンセプトとは「人が集まってみんなで楽しむという生活の基本をネット上で実現しよう」というもの。その一例が「NICOScript」(ニコスクリプト)と呼ぶ専用のスクリプトを用意したこと。これを使えば、動画投稿者が視聴者にアンケートやクイズの実施などが可能になる。より動画製作者と視聴者のコミュニケーションが密になるはずだ。

 ニコニコ動画の有料会員が支払う会費は月額525円(チケット課金は90日1680円)。有料会員になると専用の回線を割り当てられるため、ストレスなく動画を楽しむことができる。無料会員の場合は、時間帯によってダウンロードが少し重くなったり、画質が多少落ちる「エコノミーモード」での閲覧となる。お金を払ってでも、快適に利用したいと考える有料会員がすでに8万人も存在するが、「来年9月期の単月黒字化を目標としている」状況(ニワンゴ広報)という。今後、動画配信システムなどへの先行投資をいかに早く回収できるかにも注目しておきたい。

(文/永田寛哲)

<お詫びと訂正>
上記記事の初出に誤りがありました。最後の段落で「ようやく単月で黒字化した」と記載いたしましたが、既に訂正してあります通り「来年9月期の単月黒字化を目標としている」の誤りでした。お詫びして訂正させていただきます。