「iBeacon端末1個、約500円」――。今、わずか500円の置物が、店舗ビジネス業界を大きく変えようとしている。

 iBeacon(アイ・ビーコン)とは、2013年6月、米アップルがiOS7の機能として発表したテクノロジー。米Estimoteが開発したBluetoothを使った近距離無線通信技術「Beacon」がベースとなっているもので、メディアや開発者の間で話題になった技術だ。

 使い方はこうだ。Bluetooth通信ができる回路と、通信内容を入れるメモリー、制御回路、バッテリーを詰め込んだ「iBeacon端末」を店舗に設置すると、近づいてきたスマートデバイス(iPhoneやiPad)にめがけて、セールスプロモーションを自動的にプッシュ通信してくれる。店舗の近くに来た見込み客を呼び込むためのO2O(Online-to-Offline)ツールとして、デジタルマーケティング業界では注目の的となっているのだ。

 iBeaconが視線を集めている理由は、1台500円程度にまで端末価格が下がってきたこと。端末を作っているメーカーは、米Estimate以外に、アプリックス芳和システムデザインイーアールアイなど国内外に複数社ある。それぞれ特徴を持たせて、壁に張り付けられる軽さのボタン電池式端末から、10年間無停電で使用できる乾電池式などさまざま。用途に応じて、端末の形態を選べるようになってきた。

 さらに、iOS7対応製品だけではなく、Android端末にも対応するiBeacon端末(正確にはBeacon端末)も出てきており、幅広く情報発信できるような態勢が整ってきていることも、追い風となっている。

 スマホ側のBluetoothがONになっていること、通信するアプリがバックグラウンドでも稼働していることなどの前提条件があるものの、手当り次第に送信するダイレクトメールや、店外で配布するチラシ、NFC(短距離無線通信)を使ったマーケティングツールといった他の手段よりも、iBeaconのほうが効率的に顧客を捕まえられると期待されている。

 これまで足りなかったのはその実績だが、iBeaconの発表から約1年が経ち、最新活用事例が広がり始めた。2013年末には、米国の百貨店大手Macy’sが店舗内でiBeaconの利用実験をスタートさせるという発表があったほか、メジャーリーグでの活用事例報告もあり、米国ではいち早く動き始めている。

 国内でもiBeaconの実証実験や本サービスが徐々に増えつつある。6月にはユナイテッド&コレクティブとShowcase Gigが、共同で開発したシステム「スマートオーダー」を、ハンバーガーレストラン「the 3rd Burger アークヒルズサウスタワー店」に導入したことを発表。iBeaconを通して、クーポン配布やデジタルスタンプなどの情報を顧客に渡す以外に、「調理完了」といったステイタス情報をスマホ側に配信することで、受け取りまでの時間を短縮できるという。

 同じようにデロイト トーマツ コンサルティングやアイリッジ、日本写真印刷なども、O2OとiBeaconを組み合わせた最新事例を「モバイル&ソーシャルWEEK 2014」で発表する予定だ。

 このほか、こんな事例も出てきそうだ。ベンチャー企業のキーバリュー(東京・千代田区)は、座布団にiBeacon端末を仕込んで、「人が座っている」「座っていない」という情報を発信する「スマート座布団」を開発した。

 飲食店の席に設置することで、座席を管理するだけではなく、時間ごとに変化する顧客数を把握し、メニューやサービスなどと組み合わせて、コンサルティング業務に役立てる考えだ。このスマート座布団を使った座席管理システムを、9月に開催するイベント「東京ゲームショウ2014」の商談エリアにおいて、テスト導入する計画もある。

キーバリュー(東京・千代田区)が開発した「スマート座布団」。イスに座ると、スイッチが入り、iBeaconが作動し、店内に設置したiPadに向けて、「座っている」という情報を送信することができる。飲食店の座席管理などに活用する計画だ
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 今後、こうしたiBeaconを使ったシステムは着実に増えてくる。自分のスマホのBluetooth機能をONにして、必要なサービスを受け取れるようにしておかないと、損をする時代がすぐそこまで来ているのだ。

(文/渡辺一正=nikkeiBPnet編集部)

iBeaconの最新活用事例を紹介!
 iBeaconの最新活用事例が聞けるセミナー「モバイル&ソーシャルWEEK 2014」が、六本木アカデミーヒルズ49にて、7月23日(水)からスタートする。口火を切るKeynoteスピーチとして、7月24日(木)、デロイト トーマツ コンサルティング Deloitte Digital 日本統括責任者の石?雅之氏が登壇する。「いま経営層が認識すべき、モバイル&ソーシャルパワー~iBeaconライブデモ実施~」というタイトルで、iBeaconを通じて、モバイル×ソーシャルが持つポテンシャルを解説する予定だ。このほか、同日13時40分から、アイリッジ代表取締役社長の小田健太郎氏が、16時50分からは、日本写真印刷の新規ソリューショングループ・アプリプロデューサーの村山庸一氏が最新事例を解説する。このいずれも、無料で聴講できる。

◆モバイル&ソーシャルWEEK 2014
http://expo.nikkeibp.co.jp/msw/2014/