四角くて背が高い、新しいカタチのオープンコンパクト(画像クリックで拡大)

 日産の「ラウンドボックス(R.D/B.X)」は全長3650mmと、「マーチ」よりも短いコンパクトなコンセプトカーだ。小さくて四角い日産車といえば、若者にも人気の「キューブ」がある。とするとラウンドボックスは、次期キューブの先行開発車なのだろうか? 東京モーターショーの会場で、日産はその手応えを確かめようとしているのか? そう安易に勘ぐってしまったが、答えはノー。日産の先行商品企画担当者は、このクルマの成り立ちをこう語った。

 「皆様に好評をいただいているキューブは、クルマでありながら自分の部屋にいるような感覚を重視していますが、ラウンドボックスはドラビングのワクワク感に代表される“動”の魅力を、これからの若い方々に楽しんでいただくための、新感覚オープンスポーツカーの提案の一例なのです」。

 ラウンドボックスの想定ターゲットは、「都市部に住む大学生」。気の合う仲間とわいわい過ごすのが好きな若者たちに向けた、新しいカタチの提案だ。ドライバーだけでなく、乗車定員である4名すべてが移動する爽快感や高揚感を共有できるのがポイント。そしてスタイリングやインテリアに、あえて異質なものを組み合わせた「ミスマッチ感覚」を取り込んでいるのがイマ風の演出だ。

下半身は張り出したタイヤで安定感とたくましさを表現、上半身はカジュアルなイメージ(画像クリックで拡大)

 まずエクステリアだが、下半身とフロントマスクは、日産伝統のスポーツカー「フェアレディZ」のたくましさや安定感を表現。そして上半身はカジュアルなコンパクトカーというイメージだ。往年のスポーツカーファンの眼には、冒険しすぎと受け止める人も多そうだ。しかし、クルマに興味を持たなくなったといわれて久しい若者たちに、この異質な組み合わせは逆に新鮮に映るのでは。

 インテリアも外観と同様、チャレンジ精神にあふれている。室内はすべての乗員スペースを広く均等に割り振ったうえで、前席/後席ともに同一のシートを採用。移動する4人が徹底的に時間を共有できるように、平等な乗車環境を提供する。3分割式のルーフパネルを外せば、まさしく身も心も解き放たれる。スポーツバーでサッカーの試合を見ながら、店内が一体となって盛り上がるような感覚を、ここでは意図しているという。

インテリアも負けじと先進性とリラックスをブレンド。コンソールパネル中央の大きなディスプレイは、ドライバー以外の乗員も操作できる(画像クリックで拡大)

 シートのデザインも、座面はフラットなベンチシートで、背もたれの部分だけが体を適度に包み込むバケット型だ。ここでもあり得ない異質な組み合わせが、おもしろい調和のあるラウンド感を生んでいる。

 近未来の室内装備といえる「キャッチボールディスプレイ」にも注目したい。これは、オーディオやカーナビの操作アクセス権がドライバー以外にも与えられ、コンソールパネル中央の大型モニターと、ドライバー正面の小型モニターで情報の双方向・共有化を図るものである。

4人が分け隔てなく楽しい時間と開放的なムードを共有できるのが魅力。前後とも同一のシートが採用している(画像クリックで拡大)

 日産ではフェアレディZと、新生「NISSAN GT-R」の2大スポーツモデルの存在感が際立つが、こちらは大排気量かつ圧倒的なメカニズムとパフォーマンスで“個”の欲望を満たすスタンスだ。これに対しラウンドボックスは、“輪”を包み込むコンパクトスポーツという、新たなトレンドをたぐり寄せようとしている。環境に配慮した直噴型の1.6リッターターボエンジンと、スムースな走りを引き出すエクストロイドCVTを搭載。駆動方式をFFとしていることも、その現れといえよう。

 このコンセプトがここ数年内に実現する可能性は未知数だが、内外のデザインなどは、今後の日産コンパクトカーに反映される可能性もあるという。

(文・写真/いとう洋介)