「女の子」の感性に近づく本10冊

 今回お薦めする本は、あえて「女の子」をキーワードにしてみました。

 いわゆる「女性の心理が分かる本」などではないのですが、女性の感性を知ることで、本との新しい出会いが必ずあると思います。あるいは「女の子」的な視点を知ることもできそうです。

『女の子のための現代アート入門~MOTコレクションを中心に』

長谷川祐子[著] 淡交社[刊] 2100円(2010年2月26日)

『女の子のための現代アート入門~MOTコレクションを中心に』

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長谷川祐子さんは、美術評論家、学芸員、キュレーターで、現在、東京都現代美術館に勤務する方です。タイトルからすると、軽めの内容を想像するかもしれませんが「女の子のための」としているのは、アートに対して難しい先入観を持つのではなく、気楽に楽しんでもらうためであって、実は内容はしっかりしている。長谷川さんは以前より「美術館は感性のエステサロン」と唱えていて、ここでは、1950年から2010年までの作品約60点をとりあげ、わかりやすい切り口で語っています。ファッションのように自分の日常にとり入れて、アートを通じて知性と感性を磨くというのが目的。

『あさって歯医者さんに行こう』

高橋順子[著] デコ[刊] 1470円(2009年6月)

『あさって歯医者さんに行こう』

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今年で66歳、「歴程」同人です。東京大学卒業後、出版社に勤めながら、第一詩集『海まで』を上梓しました。これまでにも『幸福な葉っぱ』(現代詩花椿賞受賞・書肆山田)などの詩集や、エッセイ集『博奕好き』(新潮社)などを出されていますが、こちらは詩集で、若い人に自分の詩を届けたいということで、今までではありえないカジュアルな装丁で、詩の数もグッと少ない。 実はこの詩集は毎日新聞タブロイド誌『ここち』(連載終了)と、健康フリーマガジン『からころ』(連載中)に掲載されていた詩、未発表作品からなる全39編を編纂したものなのですが、すごくポジティブになる、元気になれる詩ばかりなんです。自己啓発のような言葉は一言もない。でもこれほど短い言葉にこんなに力があるんだ、と思わされます。元ミス東大で美しい人です。

『KiKi Mountains 1 to 11』

KiKi[写真・著] between the books[刊] 1700円(2010年)

『KiKi Mountains 1 to 11』

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モデル/女優のKikiさんによる手のひらに収まる小さい写文集。執筆活動も行い写真展も開催する彼女が、趣味の山登りで撮影した文章と写真でつづる『山の物語』。もともと、自分で手綴じで作っていたものを、出版しました。Kikiさんはもともと大学の建築学科出身ですし、多才な人。結構何度の高い山も制覇してますが、「趣味感」があるところ、女性が登って良いなぁと感じたそのままの感じが出ているところがいいですね。

『100 Things in My Room』

伴美里[著] ユトレヒト[刊] 1050円(2009年)

『100 Things in My Room』

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女性のアーティスト…ペインターなのですが、彼女が家の中にある「100のもの」を描いたものですね。すごくいいものもあれば、すごくどうでもいいものもあるのが「家」ですよね。いいものをセレクトして描く、という企画はあると思いますが、どうでもいいものまで描くというのがこのプロジェクト。そのものにまつわるエピソードを書き添えて、描いてもらいました。一つひとつのものが、彼女の部屋に存在する理由があり、それはモノを通して彼女自身を浮かび上がらせる試みでもあります。

『ME MAGAZINE #18 WINTER 2009』

MELIA MARDEN[他 写真・著] 1260円(2009年)

『ME MAGAZINE #18 WINTER 2009』

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『ME MAGAZINE』は毎回1人のセレブ(有名人)をとりあげて、その人の周りのさまざまな人に同じ質問をし、その人との関係性や印象を語ってもらいながら、本人を解剖していく雑誌ですね。その友人やコミュニティを紹介しながら、その人生やライフスタイルに迫ります。この『ME MAGAZINE #18 WINTER 2009』で取り上げられているのは、Looking Glassというケータリングユニットを組むシェフのMelia Marden。アメリカを代表する現代美術作家、Brice Mardenを父に持ち、幼少時にはロバート・メープルソープがMeliaのヌード・ポートレートを撮影した作品はグッゲンハイム美術館に所蔵されているなどセレブリティ。彼女にかかわらず、この雑誌の人選がおもしろくて、取り上げられた時点では日本で無名だった人が何年か後には有名になっていたりします。

『プレゼント』

横尾香央留[著] 雄鷄社[刊](2009年1月)※絶版。アマゾンにて中古品扱い

『プレゼント』

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横尾さんは現在30歳の女性で、いわゆる「お直し」をするクリエイター。でもただ直すのではなく、リメイクするのでもなく、クリエイティブお直しとでも言うべき仕事をしています。たとえば穴が開いていたら、それを顔に見立てて刺繍を施したり。誰かのことを思ったときにひらめいて手をかけて「直し」をしていく細やかな作品が、作り方付きで紹介されています。ちなみに僕はコレを読んで刺繍しました。

『thinkables』

Anu Tuominen[著] jack in the box[刊] 2008年

『thinkables』

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1961年、フィンランド生まれの女性アーティスト、アヌ・トゥオミネン。すごくセンスのいい女性で、新聞を岩に見立てて鳥を作ったり、手袋を動物に見立てたり。「Clothes」の項では「パンツのポケットにパンツを、ジャケットのポケットにジャケットを入れてみる。」「いがいがの木の実が古いカーディガンやプルオーバーにびっしり付いた天然のカモフラージュ。」などこんな発想があったのか、ということと美しさで心をとらえられます。

『春夏秋冬 お菓子の旅』

甲斐みのり[著] 主婦の友社[刊] 1470円(2010年3月29日)

『春夏秋冬 お菓子の旅』

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これは銘菓を紹介する本。甲斐さんは「乙女道」の教祖的な存在ですが(笑)、器やパッケージ大切にしながらお菓子を紹介しています。日本各地の季節のお菓子を352点紹介しているので、旅の本として紹介しても良いと思うんですね。旅の本だと思って読んだらお菓子とも出会えた……というような出会いがあると思います。

『空爆の日に会いましょう』

小林エリカ[著] マガジンハウス[刊] 1470円(2002年8月22日)

『空爆の日に会いましょう』

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彼女の作品ならどれでも良かったのですが……独特の視点を持った女の子だと思います。これはいわゆる「9.11」を境に、空爆が起きた日、結果として133日間、他人の家を泊まり歩き、夢日記をつけたという記録です。どこかで誰かが空爆で死ぬ、という状況があった日と、生きている自分自身とを、夢と記憶で繋ぐ。そんな試みが記されています。読む人によっては痛々しく感じることもあるかもしれませんが。

『vedove widows』

takashi homma[他 写真] ユトレヒト[刊] 3990円(2009年)

『vedove widows』

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写真家のホンマタカシさんがイタリア、ラパッロでのFotografiaフェスティバルでの展示にあわせて制作したもの。未亡人を11人紹介してもらい、彼女たちの家を訪れ撮影し、なおかつその未亡人たちの家の引き出しに眠っていたスナップショットをミックスさせて完成したもの。1人の写真家が撮りおろしたもの、決定的な瞬間を写したもの、あるいは同じ人物だけをテーマにして編纂されたものが写真集とするところもあります。でも、写真を集めたものも、写真集なんです。女性の歴史が伝わってくる、素敵な写真集です。

江口宏志 Hiroshi Eguchi

1972年生まれ。2002年、代官山にセレクトブックショップ『UTRECHT』をオープン。05年中目黒に移転。『finerefine』『LOVELESS』をはじめとするブックスペースのディレクション、『日生ライフプラザ品川』に併設されたライブラリー、葉山のデザインホテル『Scapes』のライブラリーのセレクト/ディレクション、書評執筆、アーティストブックの出版など、本にまつわるさまざまな事柄に携わっている。自著に『表紙とカバー』(PIEBOOKS発行)『100BOOKS』(UTRECHT著/AAC発行)がある。

■URL(ユトレヒト):ユトレヒト
■URL:35.64474 139.70057
■UTRECHT/NOW IDeA/aMoule
  URL:http://www.nowidea.info/
  ショップ:東京都港区南青山5-3-8 パレスミユキ2F
  TEL:03-6427-4041

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