書店員お薦め

『光媒の花』

道尾秀介[著] 集英社[刊] 1470円(2010年3月26日)

『光媒の花』

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書店員にファンの多い作家なのではないかと思います。特に昨年の『鬼の跫音』以来、ミステリーながら文芸的な要素の強い作品を書かれていますが、その江戸川乱歩的な大正ロマンの香りがとてもいい。本書も『鬼の跫音』の続編で連作となっています。30年前に父親が自殺し認知症の母と2人きりで暮らす中年男、ある罪を犯した幼い兄妹などを描いた6章からなる群像劇。書体、文字の並び、空間すべてにこだわりを感じます。その世界観に心が動かされます。夏目漱石の『こころ』が好きな方には特にお薦めしたいですね。

『オー!ファーザー』

伊坂幸太郎[著] 新潮社[刊] 1680円(2010年3月26日)

『オー!ファーザー』

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大変売れている作品です。今までの伊坂さんの作品に比べれば、それほど外連味(けれんみ)もないですし、どちらかといえば、もともとの伊坂さんの作品らしい、『砂漠』などと同様の読みやすさがあります。6人家族の主人公は、母一人、子一人なのに、飛びっきりアクの強い父親が4人もいる。ある日そのうちの1人と一緒に出かけたことから、とんでもない事件に巻き込まれるというお話。文章的な警句よりもストーリーとして面白いですね。

『1Q84 BOOK3』

村上春樹[著] 新潮社[刊] 1995円(2010年4月16日)

『1Q84 BOOK3』

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言わずもがなの、3冊目ですね。『BOOK2』が不完全な終わり方ですから、あれで終わるわけがないですから。こちらは発売日16日当日、雨にも関わらず、かなりの冊数を売り上げました。実は店頭では『BOOK1』が売れています。まだ読んでいない、という方もこれから読まれる事をお薦めします。個人的には、村上春樹作品の中で、久々に期待通りの作品でした。

編集部お薦め

『十字架』

重松 清[著] 講談社[刊] 1680円(2009年12月14日)

『十字架』

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中学2年でいじめを苦に自殺してしまった「あいつ」の遺書には、4人の同級生の名前が書かれていた。その重い十字架を背負って生きなければならなくなった主人公の悩み、迷い、傷つきながら手探りで進んだ20年間を描く。なぜ、あいつは僕に、〈親友〉〈ありがとう〉と書き残したのか…。進学、大学卒業、就職、結婚、そして息子を得て父親になった今、「あのひと」との約束を果たす。第44回吉川英治文学賞受賞作。

『ほかならぬ人へ』

白石一文[著] 祥伝社[刊] 1680円(2009年10月26日)

『ほかならぬ人へ』

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経済、貧困、結婚、セックス、死など、現代社会の問題を巧みに盛り込み好評を博した『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』で第22回山本周五郎賞受賞した著者の、受賞後、第1作にして、第142回 直木賞受賞作。3人の女性と関わりがありながら「ほかならぬ人」を求める男性の心の動きを描く表題作のほか「かけがえのない人へ」を収録。いずれも恋愛作品で「恋愛の本質」に迫るもの。「婚活」する男女に一石を投じてくれそう。

『廃墟に乞う』

佐々木 譲[著] 文藝春秋[刊] 1680円(2009年7月16日)

『廃墟に乞う』

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『警官の血』『笑う警官』(今秋映画公開)など、話題作を次々と発表している著者の、警察小説で、非常に“らしい”作風だ。北海道警察捜査一課捜査員・仙道孝司は、ある事件をきっかけに自宅療養をしている。休職中という自由な立場を生かし、持ち込まれた事件の捜査をするのだが、警察手帳も拳銃も持てないままでの活動となる。彼は、事件をどう解決するのか。ニセコ、夕張などを舞台に、北海道が抱える社会的問題を鋭く描いている。第142回 直木賞受賞作。

Part2:オンライン書店「ユトレヒト」代表 江口宏志さんに聞く
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