名優・仲代達矢が「自分の長い役者人生のなかでも、この脚本の出来映えは150本中、5本の指に入る」と絶賛するほどに脚本に惚れ込み、9年ぶりに主演した映画が『春との旅』だ。74歳の老人と19歳の孫娘が、親類を訪ねて旅をする物語のなかに、仲代は何を見たのだろうか?

 物語は北海道・増毛の寂れた海辺から始まる。忠男(仲代達矢)はここでニシン漁を生業にしてきたが、そのニシン漁も今は廃れ、かつての面影もない。忠男自身、足が不自由となり、5年前に娘を亡くしてからは、孫娘の春(徳永えり)に頼って暮らす日々。だが、地元小学校の廃校に伴い、春が給食係の仕事を失ったことからドラマが幕を開ける。

 春は「東京に出て仕事を探す」と言い出し、その一言に、春がいないと暮らせない忠男は激怒。引き留める春を振り切り、家を出てしまうのだ。行く先は、今は疎遠となっている姉兄弟の家。頼れる家があれば、そのまま居候させてもらう魂胆だ。だが春は、足の不自由な忠男を1人で行かせるわけにもいかず、慌てて祖父を追いかけることに。かくして、忠男と春との2人旅が始まっていく。

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