<インプレッション>
カルチャー雑誌からブランドエンタテイメント雑誌へ

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 私がNAVI編集部にいたのは、90年春からほぼ3年間。ある意味、黄金期だったとは思うし、毎号の実売が確か10万部を超えていた。今はおそらくその半分以下であり、つくづく時代の変化を感じさせる。

 中身も充実していた。個人的には私が大学に入った87年頃から愛読していたが、本当に専門誌の枠を越え、面白かったと思う。

 創刊は84年。クルマでいうと、多少前後するが初代トヨタ・ソアラや2代目ホンダ・プレリュードが売れたハイソカーブームの時であり、本当の意味で自動車が道具ではなかった時代だ。戦後の3C、つまり“三種の神器”(クーラー、カラーテレビ、自家用車)であった時を越え、クルマは見栄であり、社会的な地位を表す記号だった。

 BMW3シリーズは、六本木のカローラであり、ポルシェ911は女子大生に「ぽるぽる」と言われた。思い出すのはNAVIでも連載していたコラムニスト神足裕司とイラストレーター故・渡辺和博氏の共著『金魂巻』である。

 これは同年84年のベストセラーであり、いわゆる横文字商売の人達を「○金」「○ビ」の言葉でズバリ斬っていたが、第1回流行語大賞を受賞、見事時代を言い表していた。

 NAVI誌上でも両氏の筆は冴え渡り、私の様に特に鋭くもない、ハンパな都会の自動車マニアである劣等学生にも世の中を面白く読み解いてくれた。例えば今、中森明菜が自殺未遂を起こした直後のNAVIの神足氏のコラムをふと思い出す。

 彼女は直前、免許書き換えのために試験場を訪れていたといい、それを知った神足氏は、「試験所ではアイドルも一般人も等しく扱われる。だからこそ彼女は、ある種の絶望を味わったのではないか」というような事を解いた。私は、なんとも想像性に満ちあふれた当てずっぽうだと思うと同時に、その感性に痺れた。