モータージャーナリスト=清水 和夫 氏

独ニュル24時間レースで目撃した事実

 今年5月、ドイツで開催された伝統のある「ニュルブルクリンク24時間レース」にドライバーとして参戦した。そこで私は驚くべき事実を目の当たりにした。天然ガスエンジンを積んだフォルクスワーゲン(VW)「シロッコ」が、驚くべき速さを示したのだ。それは、ガソリンエンジンのシロッコよりも速かったのである。

 今回は、ガソリンやディーゼルの陰に隠れた感のある、天然ガスエンジンの可能性についてリポートすることにしよう。なお、天然ガス車の基本技術に関しては、以前「スバルB4天然ガス自動車」を取り上げた回でリポートしているので参考にしてほしい。

 私がステアリングを握ったのは、2リッターのターボガソリンエンジンを積む富士重工業「スバル・インプレッサ」であった。この24時間レースにはポルシェやBMWという名門チームが数多く参加し、総参加台数は優に200台を超える。

 ベルギーとの国境に近い丘陵地帯に広がる1周25kmのニュルブルクリンクサーキットは、1920年代に作られた20kmの北コースと、F1も開催される新しい5kmの南コースを併せたもの。サーキットとしては世界一長いコースである。

 スバル・インプレッサと同じクラスには、VWからシロッコが4台もエントリーしていた。そのうちの1台は、昨年からこのレースに出場しているVWの技術担当副社長、ウーリッヒ・ハッケンベルグ氏がステアリングを握っていた。

 しかし、よく見ると今年のVWシロッコは青と赤のボディカラーで2つのチームに分かれて参戦していた。昨年から力をつけてきたこのシロッコチームは、予想どおり予選結果の上位を占めたのだが、最も速かったのは赤のシロッコ、なんと天然ガス車であったのだ。これには当事者たちも驚きの色を隠せない。

 同門対決の結果、ガソリン車が天然ガス車にわずかな差ではあったが、負けたのである。

 実のところ、天然ガス車をレースで見たのは今回が初めてではない。10年くらい前からアウディはレース仕様の天然ガス車で、この24時間レースに参戦していた。ガソリン車以外の「代替燃料車」というユニークなクラス(カテゴリー)が設立されたのも、そのころである。ドイツの自動車メーカーは技術開発と一般ユーザーへの啓蒙を目的として、積極的にレースで新しい技術をデビューさせていた。BMWはディーゼルに力を注ぎ、同レースで見事にクラス優勝を果たしている。

2009年5月、筆者がドイツ「ニュルブルクリンク24時間レース」に参戦したスバル・インプレッサ