「バーミキュラ」は写真のパールピンクのほか、パールグリーン、パールブルー、パールグレー、パールブラウンの全5色を用意。大きさは直径22cm、重さは4\.2kg。春からはメッセージや名前を刻印する「オーダーメイドネーミングサービス」も開始する(画像クリックで拡大)

 この不況下にもかかわらず、2万3800円と高価な鍋に注文が殺到している。それは愛知ドビー(本社:名古屋市)の鋳物ホーロー鍋「バーミキュラ」。発売は2010年2月17日だが、発売日がまだ決まっていなかった1月末の段階で500個の予約があり、現在は4カ月待ちのバックオーダーを抱えている状態だ。

 鋳物とは鉄と炭素の合金のこと。それにホーロー加工(ガラス吹き付け塗装)を施したのが、鋳物ホーロー鍋だ。鉄は熱伝導性が高く、炭素とホーローは遠赤外線効果と保温性が高いのが特長。このため弱火で調理しても、熱効率がよいのでおいしく料理が出来上がる。重くしっかりとした気密性の高いフタにより、食材が含む水分だけで「無水調理」もできる。

 同社はもともと工業メーカー向けに鋳物の精密部品を製造している会社で、3年ほど前に「独自ブランドの確立」を掲げ一般消費者向け製品の開発に着手した。鋳物ホーロー鍋に決めるきっかけになったのは、同社専務が友人からもらった仏製の鋳物ホーロー鍋。それでカレーを作り、専務の兄である社長が食べたところ美味しかった。その感激から新規事業を鋳物ホーロー鍋に決定。同社が得意とする鋳造技術と加工技術なら、気密性を高くし、より日本人に使いやすい製品を作れる確信もあった。重くても女性が毎日使いやすい形状、高級感のあるデザインなど、「日本から“世界最高の鍋”を作る」という目標で開発した。

 製品は出来上がったものの、メーカー直販なこともあり、消費者に知ってもらうことが課題だった。そこでイベントやネットで製品をPRすることに。まず、2009年11月末に東京・国際連合大学前で開催した有機野菜の直販イベント「ファーマーズマーケット」で、バーミキュラによる温野菜の試食とカレーの販売を実施。2009年12月3日には東京・恵比寿でフードコーディネーターの講師を招き、ブロガーを対象に料理会を実施。このほか有名な料理ブロガーにバーミキュラのサンプル品を提供したところ、製品を気に入ったブロガーがバーミキュラで調理した様子をブログに掲載し、ネットで知られる存在となる。さらに、2010年1月にはテレビ番組でも取り上げられ、一気に知名度が上がった。

 500件もの予約は、3カ月間で500個ペースの生産体制を計画していた同社の想定を大幅に超えるものだった。生産体制を見直し、月産500個ペースに製造能力を上げ、初期予約分を出荷できる状況になってから発売日を決定した。同社はヒットの要因を「料理研究家や著名な料理ブロガーに、製品のありのままを伝えてもらったこと」と分析する。ブログなどで実際の使用感を疑似体験できることが、購買行動につながっているようだ。

(文/生崎文彦=日経トレンディネット)