こんにちは、西友の富永です。

 2012年11~12月の本コラムで、友人夫妻が営む農園のブランディングについて記しました。先日久しぶりに彼らと会って話をした私は、彼らの事業の成長や、とてもしっかりとしたブランディングの現状を聞き、非常に感心しました。

 さらに、彼らの話は新規事業をどのようにマーケティングしていくべきかについて多くの示唆が含まれたケーススタディのようでした。そこで今回は、彼らの事業ヴィジョンがどのようにブランディング活動につながっていったかを整理してみたいと思います。

 彼らが職業としての農業に初めて触れたのは「新農業人フェア」というイベントでした。これは新たに農業に就業する人とトレーニング・修業の場をマッチングするようなもので、ご主人はここで修業先となるグリーンポートアグリと出合いました。同社は成田空港が主催しており、滑走路の隣の畑で農業を営んでいます。

 研修料も泊まり込みも不要、さまざまなサポートもしてくれるという好条件。何よりそこで出会った、“一国一城の主”である同年齢の先輩たちの輝き。そうしたことに引かれた彼は研修に参加し、2年間にわたって有機農業の畑の作り方から作付け・販売計画までを学んだのです。

左は筆者、右が「有機農園 けのひ」を営む北原夫妻
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自分たちにとっての有機農業とは何か

 彼らは研修を終えたあと、まず「有機農業の本質は何か」を考えに考えました。その結果、有機農業とは農薬や化学肥料を使わないといった農業手法の枠を超えた“生き方や思想”であり、その核に「循環」があるという結論に至ったのです。

 農業は効率を突き詰めていくと、バナナのプランテーションのような単一作物の大規模な栽培に行き着きます。しかし彼らの有機農業では、科をまたぐ多品種を輪作して畑を育て、またそれにより収穫時期をずらし、天災などのリスクをヘッジする方法で自然との折り合いをつけます。

 また彼らは有機農業の「有機」の意味を単なる有機物ではなく、中国の故事成語「天地有機」に求めます。天地有機は「天地に機あり」と読み、大自然にはそこに組み込まれたシステムのようなものがある、という意味を持った言葉。ここから彼らは「有機農業は自然の摂理に合った農業である」という指針を導き出し、これこそが自分たちの求める道でだと志を確立しました。

 そして就農した彼らは2年目を迎えるころから、「その志をどのように顧客に伝えるか」という問題意識を持ち始めました。そして、私とともに「自分たちの顧客がたった一人であったとすれば、それはどんな人か」「自分たちの事業を人にたとえたら、その人はどんな性格か」といった自問自答を重ねることから、ブランドを形にする工程をスタートしたのです。

有機農園 けのひの農場
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