前後の車輪で走る2輪車、つまりオートバイと、4つの車輪を持つクルマの共通点は多い。そもそも、エンジンという“パワー発生機”からタイヤに力を伝えて走るという意味で、両者は同じメカニズムを持った装置だからだ。共通点を挙げていったらキリがないが、一方で異なる点も実はたくさんある。例えば、クルマではずっと以前になくなってしまった2サイクルエンジンがオートバイではつい先ごろまで販売されていたり、クルマでは4気筒以上のマルチシリンダーエンジンが当たり前の中、いまだにオートバイではシングル(1気筒)やツイン(2気筒)に多くの愛好者がいる。こうした大きな違い以外にも、細かなパーツがそれぞれの特性に応じて最適化されていて、つまり“違う”のだ。

 そんな中、オートバイとクルマで見た目も中身も大きく異なるパーツの代表格がタイヤである。タイヤの役割は大きく分けて4つある。(1)車体の重量を支える、(2)駆動力(主に前進する力)と制動力(ブレーキ)を路面に伝える、(3)駆動の方向を制御する(曲がる)、(4)路面からの衝撃をやわらげる、である。オートバイとクルマでは、おおらかに言って(1)(2)(4)はほぼ共通といえよう。しかし、大きく異なるのは(3)の部分だ。その原因は、オートバイとクルマの“曲がる”原理が根本的に違うことにある。

 まず、クルマの曲がり方を見てみよう。

 クルマの場合は、ステアリング(ハンドル)によって前輪のタイヤの方向を変えて、その方向に駆動力が働くことで“曲がって”いく(コーナーリングフォース)。走りながらの旋回になるので、クルマに働く遠心力で、ステアリングによって決められたタイヤの方向と車体が曲がる方向にズレを生じる。その角度を「スリップアングル」と呼ぶ。4輪ではこうしたスリップアングルをできるだけ小さくする(すなわちハンドルを切った方向にきちんと曲がる)ために、タイヤの接地面積をできるだけ増やして地面とのグリップ力を上げるよう工夫する。その結果、クルマ用のタイヤは断面形状が“四角”くなった。

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