(3)「相手の自分に対する態度が他人に対するそれと違う」という気づき

 このポイントはいうまでもなく「好意的に気になる人物である相手」にとって「自分は特別な存在なのではないか」という気づきであり、またそれにより相手があなたを本格的に特別扱いし始める瞬間です。

 恋愛感情に始まりの一点があるとすれば、ここなのではないかと私は考えます。具体的には、どんなことでしょうか?

 例えば「視線を感じる」というのはその一つです。また重要な点として、一人称の使い方が変わるというのもあります。それまでは「わたくし」という一人称を使っていた相手がある日、「ぼく」と言ったらグッと心理的な親密さが近づいた感じがしませんか?

 厳密に考えると、相手がほかの人に対してどのような一人称を使っている方は分からないわけであり、なのでその変化に特別な意味があるかどうかも分かりません。しかし、自分にとっての相手は自分から見えている部分が全てなので、この変化は親密さや好意のレベルの変化である、と感じてしまうという次第です。

 どんな一人称を使うかは自分と相手の関係性を自分がどう捉えているかを反映しますので、それを変えるということは、このように強力なシグナルになります。これほどではないにしろ、いままで授業・仕事などいわば公共の話しかしたことなかった相手が、ある日を境に生い立ち・価値観などプライベートに踏み込んだことを語り出す、などという変化も、強いシグナルとして、相手が「あなたはほかと違う」と感じていることのメッセージになります。

(4)パートナーとしての安心感の確認

 ここまで来ると、あなたは相手のことを「恋愛対象としてどうか」と明確に考えている状態になっていると思います。しかし、これだけではパートナーとして問題がないかどうかはまだ分かりません。

 例えば、お金の使い方や仕事に対する考え方、休日の過ごし方などライフスタイルに関する考え方、ジェンダーや役割に関する考え方、プライバシーに対するスタンスなど、そこに齟齬(そご)があると、関係にヒビがはいる要素というのはいくつかあります。

 したがって、恋愛という“パートナーシップを組む”、という意思決定にはこうした要素についての情報は大なり小なり必要になってくるわけです。

 この点を実際の恋愛に応用すると、これらの要素について相手の考え方や価値観を前もって調べ、それに合わせたコミュニケーションをするということが考えられます。しかし、それは自分の価値観を相当曲げることにつながり、いずれあなたのフラストレーションやストレスとなって返ってくる場合もあります。このため、相手との関係がうまくいかなくなる原因になると思いますので、全くお勧めはできません。

 以上、人が恋愛対象としてブランド化されるためにはどのような属性・情報・経験が必要か、ということを考えてみた結果です。

 これらをまとめ、恋愛対象としての人をブランド価値規定のように整理してみると以下のチャートのようになるのではないかと思います。ハニカムモデルとそのほかのフレームワークと比較したり、ご自身の実感と照らし合わせたりされ、よりしっくりくるモデルを考えてみる、というのも一興かと思います。

 今回はハニカムモデルを取り上げましたが、万能なフレームワークが存在しないのも事実。このコラムでは、マーケターは既存のフレームワークにとらわれることなく、自分の担当するブランドに合ったものを自力で開発しなければならない、と何度も申し上げてきました。その要素について適宜コミュニケーションしていくことにより、消費者の認知変容・態度変容を起こすことができるのです。

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著 者

富永朋信(とみなが とものぶ)

プロフェッショナルマーケター。
日本コダック(現コダック)、日本コカ・コーラ、ソラーレホテルズアンドリゾーツ、西友などでマーケティング関連の職務を歴任。日本コカ・コーラではiModeでコカ・コーラが買える自販機システム「Cmode」の立ち上げを担当。それ以来、「購買=ブランド選択+チャネル選択」という式の解を模索し続けている。西友では同社のイメージを一変させるキャンペーンを連発した。ブランドの構造はカテゴリによって違うことに気付き、全てのカテゴリのブランド構築に対応できる方法の開拓に頭を悩ませている。座右の銘はたくさんあるが、今のお気に入りは「過ぎたハンサム休むに似たり」「渾身のアイデアは全てを解決する」。