人気ドラマは、時として見る者の実生活に大きな影響を与える。それを証明するようなグルメガイド本が、7月に出版された。

 テレビ東京系列で放送中の連続ドラマ『孤独のグルメ』の公式ガイドブック、『「孤独のグルメ」巡礼ガイド』だ。

 伊豆のわさび丼や根津のカレー、群馬県大泉町のブラジル料理など、ドラマに登場した飲食店のうち約30件が掲載されている。

 ドラマ『孤独のグルメ』は、1話ごとに異なる土地を舞台に、実在する飲食店で撮影されている。原作は久住昌之原作・谷口ジロー作画の同名マンガで、輸入雑貨商・井之頭五郎が仕事の合間などに食事を取る店を選び、注文する品に悩み、運ばれてきた料理を味わう様子をこまやかに描いた作品だ。マンガでは店の名前も明かされず、店の雰囲気や料理の味、個人的な思い入れが主人公の目線から淡々と描写されていく。

 登場人物も極端に少なく、地味なことこの上ない。主演の松重豊も「おっさんがひとりでご飯を食べてるだけのドラマを誰が見るのかなと思っていた」と、公式ガイド内のインタビューで明かしている。

 ところが2012年1月~3月に初めてドラマ化されると、主人公の食いっぷりと食への偏愛むき出しの語り口調が、見る者の食欲をおおいにかきたてた。

 深夜という禁断の時間帯に食欲をそそる映像を視聴者へと突き付ける“夜食テロ”としての破壊力にヤラれる者も多く、その秋にシーズン2、翌年にはシーズン3、現在のシーズン4まで続く人気ぶりを見せている。

 松重にとって『孤独のグルメ』は初の主演ドラマであったが、ドラマ開始以降はCMやドラマで食べるシーンを要求されることが圧倒的に増えたそうだ。

 また、ドラマ開始まもなくから、ロケ地となった店を訪問する“巡礼”ファンも続出。次週予告の映像から撮影された店を推理して放送前に訪れる、「先回りツアー」に挑戦する輩の姿も目立った。ドラマファンは、ドラマに登場した料理を注文するから店側もすぐに分かるという。

 実はドラマに登場する店は、すべて番組の制作スタッフがリサーチを行い、厳選して決めている。

 マンガ原作者の久住も「ネットから探すのではなく、自らの足で探していて、そのこだわりと根性があるから、いいドラマになっているんだと思います」と、そのセレクションに太鼓判を押す。

 その情報をさらに厳選して取りまとめたのが、公式ガイドというわけだ。

 来る食欲の秋と、食欲を強烈にそそる『孤独のグルメ』。鬼と金棒のような最強タッグには、どうがんばっても抗いきれない。

 公式ガイドのページをめくりながら「次はどの店に行ってみようか」とつい気持ちが浮き立ってしまうのは、いたしかたのないことではないだろうか。


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『「孤独のグルメ」巡礼ガイド』週刊SPA!編集部

 シーズン1からシーズン3までドラマに登場した飲食店を、ドラマのシーンを切り出しながら紹介。残念ながらドラマ放送後に閉店してしまったお店もあるものの、フルカラーで料理の写真をドーンと見せ、その回のあらすじと五郎のつぶやきなどを具体的に載せている。

 マンガ原作者・久住昌之と主演・松重豊それぞれのインタビュー、原作のモデルとなった店の紹介、原作マンガからの抜粋なども。
(扶桑社/907円)