マイクロソフトのWindows戦略に大きな変化が起きている。

 2014年2月にCEOに就任したサティア・ナデラCEOは、就任直後からさまざまな施策を発表。Windowsに関してもこれまでには見られなかった新たな施策が目白押しだ。つまり、Windows戦略が大きく舵を切ったのはこの半年間のことだといえる。

デバイス全体ではWindowsのシェアがわずか14%という事実

 Windows戦略の変化とは何か?

 ひとことでいえば、「王者」から「挑戦者」への変化だ。

 マイクロソフトが取ってきたこれまでのWindows戦略は、PC市場における圧倒的なOSのシェアを背景にしたものだった。PCメーカーに対してWindows OSをライセンスし、それによる利益を確保するとともに、多くのユーザーが利用するOfficeにしても、Windows向けの開発を優先し、圧倒的シェアを誇るPC市場で標準アプリケーションの地位を確立。これもまたライセンス収入の形で安定的な収益確保につなげていた。

 実際、マイクロソフトのPC市場におけるシェアは現在でも約9割を誇る。この領域における圧倒的シェアはいまでも揺るぎがない。それにも関わらず、なぜマイクロソフトは「挑戦者」の戦略に踏み出したのか。

 それは、スマートフォンやタブレットといったデバイス市場全体を見渡すと、Windowsのシェアはわずか14%に留まるという実態が明らかになってきたからだ。

「$0 Windows」や「Office 365 for iPad」を無償化したワケ”

「Microsoft Worldwide Partner Conference 2014」で全デバイス中マイクロソフトのシェアは14%と発表
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 米マイクロソフトが、米ワシントンD.C.で開催したパートナー向けプライベートイベント「Microsoft Worldwide Partner Conference 2014」で、同社のケビン・ターナーCOOは基調講演で参加者1万6000人を前にこう宣言した。

 「年間3億台の市場規模を持つPCでは、マイクロソフトは9割のシェアを持つが、世の中で使用されているすべてのデバイスでみれば、マイクロソフトのシェアは14%に留まる。マイクロソフトはチャレンジャーである」

 ここ数年、タブレットやスマートフォンが急速な勢いで普及。同市場ではアップルのiOSおよびGoogleのAndroidが先行しており、Windowsの存在感は極めて薄い。ターナーCOOはこの状況を「見方を変えれば目の前に大きなビジネスチャンスがあるということ」と強気の姿勢を見せる。しかし出遅れ感が否めないことは分かっている。それを巻き返すためにWindows戦略の舵を切ることにしたのだ。

 ナデラCEO就任の2カ月後の今年4月、マイクロソフトは「$0 Windows」と呼ぶ新たなプログラムを発表。9型以下のディスプレーを搭載したデバイスに対し、Windowsを無償で提供し始めた。これはAndroidのライセンスが無償で提供されていることに対抗したもので、9型以下という領域からして、明らかにマイクロソフトが出遅れたタブレットを対象にしている。

 さらに、クラウドサービスである「Office 365 for iPad」を無償で提供。最も普及しているデバイスであるiPadで、Officeが利用できるようにすることで、Officeの利用ユーザーを拡大。より深い機能を使いたいユーザーには、有償で機能を提供するといった施策に踏み出した。施策はAndroidにも拡大。Windowsで圧倒的なシェアを持っている立場であったら、打ち出せない戦略だろう。

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AndroidやiOSでも実現していないOSの一本化を図る

 これだけに留まらない。

 PCおよびタブレット向けのWindowsと、スマートフォン向けのWindows Phone向けのアプリを同時に開発でき、コードやスタイル、文字列などのアセットを供給できる「ユニバーサル Windows アプリ」を発表。Windows用に開発したアプリがWindows Phoneでも動作する環境を実現し、開発者がアプリ開発に取り組みやすいようにした。

 さらに、今年7月には、次期Windowsにおいて、Windows 8.1、Windows RT、Windows Phoneという3つのOSをひとつの統合OSとして提供する姿勢を明らかにしている。これでPC、タブレット、スマートフォンといった異なるディスプレーサイズにひとつのOSで対応することになり、AndroidやiOSでも実現していないようなOSの一本化によって、開発者や利用者にとっても利便性を高める戦略に乗り出す考えを示した。スマホやタブレット向けアプリの数で、出遅れている環境を打開するのが狙いだ。