判明した不都合な真実

 ポイント、マイルといった顧客還元の仕組みは、ロイヤリティの高い上顧客を育成するために有効だ。特に航空会社のマイレージサービスは人気が高く、同じ航空会社を何度も使うという点で、利用顧客のロイヤリティも高い。

 ところで、このマイレージ会員が恐れていることの1つが、制度の“改悪”である。制度が変更になって、もらえるマイルが少なくなったり、無料航空券をもらうのに必要なマイル数が増えたりする制度変更を総じて、ちまたでは改悪と呼んでいる。

 おそらく来年以降になると思うが、航空会社のマイレージ制度は、今後一段と改悪が進むのではないかと私は予想している。そう予測できる情報を入手しているからではあるが、今回は、それも含め、制度改悪が進む背景を説明しよう。

 そもそも、従来のマイレージ制度の根幹をなすのは、「たくさん乗ってくれる顧客は、利益をもたらしてくれる」という考え方だ。

 2年に1回、海外旅行でグアムに行くだけの顧客よりも、毎週出張で東京と鹿児島を往復してくれる顧客の方が、航空会社にとってみれば確かに大切だ。

 そこでマイレージ制度では、年間の飛行距離が長い顧客の会員ステイタスを上げて、より多くの特典を提供することにしてきた。

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 JALの属するワンワールド、ANAの属するスターアライアンス、デルタ航空やエールフランスが属するスカイチームの三大陣営で、それぞれ若干のルールは違えど、大体の場合、年間5万マイル飛行する顧客はゴールド(ワンワールドの場合はサファイア)会員に位置づけられ、優先搭乗や預け入れ手荷物の重量優遇など追加サービスが受け取れる。さらに、プラチナやダイヤモンドといった、より上級ランクの会員ステイタスを用意する航空会社も多い。

 さて、それぞれの航空会社は、この制度によって優良顧客を囲い込んできたと考えていた。しかし、ある航空会社が分析をしてみたところ、必ずしもそうではないことが判明したという。

 その会社のマイレージ制度は、プラチナ会員が最も収益に貢献してくれているという前提でサービス体系を組み立てていて、コールセンターでも、プラチナ会員は最優先でつなぐし、上のクラスの座席に空きがあれば、プラチナ会員を優先してアップグレードしていた。

 プラチナを優遇するというのは、その会社に限らずマイレージ戦略上の暗黙の前提だった。ところが、最近のデータを使って、プラチナ顧客がもたらしてくれる収益とプラチナ顧客に提供しているメリット(をコスト換算したもの)を比較してみたところ、実はプラチナ顧客は、極めて収益性が低いことがわかってしまったのだという。

 実際、私もそうだが、年間に出張の多いビジネスパーソンというものは、コストを抑えるために、なるべく安い航空券を入手しようとする。安い航空券だとサービスが悪くなりそうに思えるかもしれないが、プラチナ会員になると、上のクラスに自動的にアップグレードされたり、空港ラウンジも無料で使えたりする。だから、安い航空券でも構わないわけだ。

 一方で、滅多に出張しないビジネスパーソンの場合、その出張は、直前に決まるケースが多い。すると、航空券の料金は当然のように高くなる。いくら社内規程で、「一般社員はエコノミークラス利用」と定められていたとしても、1カ前なら10万円で手に入った東京―ニューヨーク間のエコノミークラスの航空券が、3日前に買おうとすると、30万円の料金を請求されたりする。

 それでも仕事なので、乗らなければならない。このようなメカニズムがあるせいで、実際に分析をしてみると、毎週出張で同じ都市の間を出張するプラチナ会員よりも、たまに突然出張が発生する一般会員の方が、航空会社にとっては収益性が高いといった収益性における不都合な真実が判明してしまったのだ。