1つの端末にたくさんの本を収められるのが、電子書籍の大きなメリットの一つ。複数の本を同じ端末で読めるということは、どんなサイズの本でも電子書籍なら“物理的に同じサイズと同じ重さ”になるということになる。特にハードカバーのような分厚く重い本では、その効果は大きい。

 文庫書き下ろしの本も増えてはいるが、やはり新しい本は、最初はハードカバーで登場することが多い。売れ行きが一段落する頃を見計らって、文庫化でさらに読者を広げるというのが、一般的な本の販売戦略だろう。ハードカバーは本に高級感を与えるので、文庫版が出ていてもあえてハードカバーを選ぶ人もいるかもしれない。

 しかしハードカバーはその大きさや重さが問題だ。自宅で読むならあまり関係はないが、外で読むとなるとかばんに入れて持ち歩かなくてはならない。最近は、ただでさえかばんの中身は、パソコンやスマホ、予備バッテリーや電源ケーブルなどで膨れ上がる傾向にある。さらにそこに分厚いハードカバーの本を押し込むのは、1冊ならまだしも2冊3冊となると厳しい。

 電子書籍ならそうした心配はなくなる。どんな本も大きさや重さはその端末のものになるからだ。専用端末の多くは文庫サイズなので、文庫版の登場を待つことなく文庫サイズの本で読めるようになる。スマホやタブレットで読むなら、それを持ち歩いている限り、本のために荷物が増えることさえない。ハードカバーの本に限らず、ソフトカバーでも四六判で分厚い本などの場合には、小さくて軽い電子書籍で読むメリットはある。

同じ本でも専用端末ならずっと小さく軽量に
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 ただし欠点もある。一つはハードカバーで登場するような新しい話題の本が、発売間もない時点で電子書籍でも登場するケースが少ない点だ。

 現状では紙の書籍それぞれに電子書籍版がすべてあるわけではなく、特に新刊本については電子書籍版の品揃えは圧倒的に少ない。ただし話題の本がキャンペーンの一環としていち早く電子書籍化されるケースはある。実際、2012年初めに芥川賞を受賞した田中慎弥さんの「共喰い」は、受賞とそのユニークな記者会見で話題沸騰中に早くも電子書籍化され、僕はそれで読むことができた。しかし残念ながらこうしたケースは多いとは言えない。