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 VAIOは、誕生以来、独自性が際立っていたことが最大の特徴だ。

 ソニーの平井一夫社長は「VAIOは、常にソニーらしいと言われる製品を創出し、他のPCとは違うデザイン、機能、そしてフォームファクター(主要部品のサイズ)を実現してきた。また、PC市場に一石を投じ続けてきた製品でもあった」と語る。しかし数を追う事業戦略では、独自性は発揮できなくなっていった。

 2013年度に入って、この状況は少しずつ改善されつつはあった。販売台数を追うことをやめ、VAIOが持ち続けてきたプレミアム感や、付加価値を発揮する製品開発へとシフトし、その成果が形となって表れ始めていたのだ。例えば、独自の変形機構「Surf Slider」方式を採用したタブレットモードとキーボードモードの2in1パソコン「VAIO Duo 13」や、画面の中央部から変形する「マルチフリップヒンジ」を採用した「VAIO Fit Aシリーズ」などが、その代表作。ソニーらしさが感じられる製品は、確かに出てきていたのだ。

 しかし平井社長は、ソニーの「将来の画」のなかに、PC事業を組み込むことはなかった。「One SONY」という平井社長が描く「画」からは、VAIOは外れると判断したのだろう。

 平井社長は、同じタイミングで発表したテレビ事業の分社化を、「テレビは引き続き、リビングルームにおける視聴体験を実現するうえで、重要な役割を果たす。またその技術的資産はほかの商品カテゴリーにおいても、当社の差異化技術として活用される」と位置づけている。One SONYという観点から、テレビ事業の重要性を評価しているたわけだ。

 しかし、PC事業は違った。

平井社長は社長就任以来、One SONYを掲げてきた。VAIOはそのピースから外れること になる
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カメラやテレビなど他部門からPCへの技術応用はあっても、逆は限定的

 最近のVAIOシリーズには、デジタルカメラ事業で培った技術を採用した「Exmor RS(エクスモアアールエス) for PC」を内蔵カメラとして採用。タブレットモードでこのカメラ機能を使い、机の上に置いた書類などを撮影し、そのままイメージデータとして保存。これをOCR機能によって、テキストに変換して取り込めるようにしている。これはPCならではの用途提案だろう。またテレビ事業で培った「トリルミナスディスプレイ for mobile」の採用で、屋外など明るい場所での視認性を高めている。これらはまさにOne SONYらしい取り組みだ。

 しかし、いずれも他部門からPCへの技術応用だ。逆にPC事業から他の事業部門への技術的な貢献は、一部のソフトウエア製品以外、限定的だったといえる。こうしたソフトウエア資産の継承であれば、スマートフォンやタブレットの事業を維持することで継続できると、平井社長は考えたのかもしれない。

 Exmor RSやトリルミナスディスプレイなどの採用についてPC事業部門では、One SONYという言葉を使わずに、「Power of SONY」と表現していた。ここには、ソニーの他部門の技術をPCに活用するという一方向との意味合いがあったと推察できる。一方向の関係には限界がある。それが、PC事業売却の理由の根底にあると言えないだろうか。

ソニー 平井一夫社長
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