機能の高さはもちろん、もはや芸術品の域に達した美しさ

雪丘工房製のオリジナルランタンのパーツ。左からベンチレーター、風防として使えるケースカバー、本体(燃料タンク)
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 世に灯油を使うランタンは、数々あれど、大半はザックに入れて持ち運ぶには大きすぎ、たまに小型なものがあっても、粗悪な作りから、燃料である灯油がザックの中で漏れてしまうことが多い。雪丘工房の「灯油ランタン」ほど小さく、そのうえ美しさも兼ね備え、持ち運び中に燃料がまったく漏れないランタンは他に類をみない。

 雪丘工房のランタンにボクが初めて出合ったのは6年前、2007年の2月頃のこと。「なにか面白いランタンはないものか?」とヤフオクに出品されているランタンたちを眺めていると、見かけない製品を発見した。一見よくあるランタンのようなのだが、金色に輝いている。サムネイルの小さな写真をクリックしてみて驚いた。真鍮製ハンドメイドのオイルランタンだったのだ。しかも、まったくのオリジナル。う~ん、やられたぁって感じでありました。

 リンクされてた制作者のホームページを見ると、缶コーヒーサイズのランタンながら、風にも強く、影もできにくい工夫がされているという。一見してわかるその造りの良さに我を忘れ、けっこうなお値段なのも忘れて、ついつい注文してしまった。

 届いたランタンのデキは予想を超えて素晴らしかった。缶コーヒーほどのサイズに収納されているが、組み立てると風防付きの立派なランタンができあがる。ホヤ(ガラス部分)の周りに太い支柱がないので確かに影もできにくい。吊り下げても使えるが、折込式の足を出せば安定して置くこともできる。ベンチレーター(傘)の内側にはリフレクターも内蔵され、少しでも明るく、使いやすくという工夫がなされている。

 驚いたことに、このランタンのほとんどのパーツが、たった1枚の真鍮板をカットし加工して作られていた。

 分解してみると芯を支えるバネ状の支柱パーツもハンドメイドで巻き上げられている。想像しただけで、気が遠くなりそうな作業量だ。

 型に入れてプレスしたり、機械で絞ったパーツを組み立てただけで「手作り」を名乗る商品も多いが、これぞフルスクラッチ! 完全手作り!と感嘆してしまった。給油用のねじ込み式の漏斗や、芯の長さ調整用のニードルなど、組み込まれているパーツそれぞれに意味があり、一切の無駄が無いのも素晴らしい。

収納時は高さ9.5センチ。重さはわずか85g。美しい真鍮製
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鎖をつけ、折りたたみ式の足を引き出したところ
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リフレクターを内蔵した傘部分
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1枚の板を曲げたように磨き上げられたタンクのろう付け部分
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 雪丘工房全製品に通じる緩やかな上部のラインを作り出す治具類はすべて手作り。棚には様々なペンチや金切りばさみのハンドツールが並ぶ。現在作られるランタンに合わせて3種のR(曲線)を持つ治具を自作。この上で真鍮板が叩かれ、あの繊細なRが生まれるのだ。切り出された残材が、真鍮板から手作りされている何よりの証しだ。

雪丘工房の作業場。ロウ付けをするテーブルがこちら。美しいラインを生み出す治具類やロウ付け用のトーチバーナーまでもが手作りのオリジナルなのだ
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切りだされた繊細なパーツ
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オイルタンクを叩き出すために用意された枠
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真鍮板を切り出したあとの残材
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