「クラフトビール」は、「地ビール」より大きな概念

 「クラフトビールって、地ビールの別の言い方でしょ?」──という理解は、概ね合っている。神奈川県厚木市のビールメーカー「サンクトガーレン」のウェブサイトに掲載されている「ビール用語辞典」では、「クラフトビール」の項にこう記されている。

 「1.工業製品のように大量生産されるビールに対して、小規模で生産されるビールを手工芸品(craft)に例えて使う言葉。 2.クラフトマンシップ(craftsmanship/職人技)で造られるビール。ビール職人の手造りビール。 3. 地方のお土産物というイメージの強い“地ビール”という言葉を嫌って使う場合も。」

 1は、地ビールの解説そのものだ。しかし、誕生当初の地ビールのイメージそのままで「おいしくない」と思っている人も少なくない。つまり「クラフトビール」という言葉には、「昔のおいしくなかった地ビールとは違う、おいしいビール」という意味でも使われている。

 私の理解では、クラフトビールという概念は、地ビールという概念に比べて大きい。つまり、「クラフトビール」は頭に国名を付ける、例えば「米国のクラフトビール」というようにすることができるが、「地ビール(Ji-Beer)」はこの言葉だけで「日本のクラフトビール」を指せる可能性がある。それはちょうど「ベルギービール」が「ベルギーのクラフトビール」を指しているかのように。

 日本ではこうした少量生産のビールは、1994年4月の酒税法改正で、ビールの年間最低製造量が2000キロリットルから60キロリットルに引き下げられたことにより生まれた。これは時の政権である細川政権により、緊急経済対策のために打ち出された94の規制緩和策の一つであった。以来、清酒や焼酎のメーカーや酒販業者だけでなく、ホテルなど観光関連業者など様々な企業が参入していった。

 解禁されてから数年は、まさに「地ビールブーム」と言えるほどの盛り上がりを見せた。当時を知る関係者は「醸造所直営のレストランで働いていたが、開店から閉店までずっとビールを運び続ける日ばかりで、食事をとる暇もなかった」と振り返る。しかしこのブームは数年で終焉し、2003年ごろまで停滞期を迎えた。

 なぜブームは終わったか。よく聞くのは「物珍しさで最初はよく飲まれたが、おいしくないものが少なくないこともあり、継続して飲まれなかった」ということだ。これは製品の品質が良くなかった面もあるだろうが、新たに造られるようになった多種多様なビアスタイルの楽しみ方を消費者サイドもわからずに、「おいしくない」と判断されてしまったこともあろう。