「エナジー ブースト」1万4700円。ミッドソール(靴底)の新素材は、同社が約10年かけて開発したもの。従来のほとんどのソールと比較すると70%も反発力が高いという(画像クリックで拡大)

 ますます過熱するランニングブーム。シューズにこだわる人も多いが、従来のランニングシューズは、「クッション性を高めた足に優しいタイプ」か、「反発性を重視した硬い履き心地のタイプ」のいずれかを選ばねばならず、この2つの機能を両立するのは不可能とされてきた。しかし2013年2月にアディダス ジャパン(東京都港区)から世界同時発売されたランニングシューズ「エナジー ブースト」は“衝撃吸収”と“反発”という、相反する性能を兼ね備えた世界初の製品だという。

 「軟らかいのに跳ね返る不思議な感じ」「ランニングシューズなのに、まるで跳ねるクッションのよう」などと評判になり、発売と同時に飛ぶように売れた。第一弾モデルの国内取扱い数は2万足限定だったが、一時期品切れ状態になったほど。アディダス ジャパン直営店では、ランニングシューズとして過去最高の年間販売足数をわずか7カ月で達成。この過去最高記録は現在も更新中だという。

 同社は“衝撃吸収”と“反発”という相反する2つの機能を両立させたシューズを生み出し、ランニングシューズの常識やランナーの走りを変えたいと考え、新素材を模索。軽量性や耐久性、衝撃強度、低温屈曲性や幅広い温度帯での弾性にも優れ、車のスノーチェーンやスノーボード表皮、ゴルフボール表面などに採用されていたTPU(熱可塑性ポリウレタン)に着目した。そしてTPUを粒子状に発泡加工し、その後、高圧をかける特殊製法によってソール型に成形するという新しい方法を採用。これにより、細胞のような発泡形状を残したソールを完成させ、長期間衝撃吸収と反発の機能を両立することが可能となった。

 購入者からは「ポンポン前に進むので走るのが楽しくなる。これならランニングが続けられそう」「長く走っても疲れにくい。ハーフマラソンで自己記録を更新した」などの声が寄せられている。

(文/桑原 恵美子)