はしご酒のパラダイスといわれる「横浜・野毛」の“変化”に注目するシリーズ第2回。野毛は、かつては“おっさんがたむろする飲んだくれの街”と煙たがられたが、東急東横線「横浜-桜木町」間の廃線を機に、一気に新陳代謝が進んだ。今や、フツーの女の子がぷらぷら歩き、店先で女子会が盛り上がる。さらには、酔っぱらいのオヤジに対抗できるほどタフな女子は、飲み屋の主となり、個性的な店を続々オープン! 野毛で輝きを放つ女子店舗を紹介しよう。

 ※本記事は「客も店主も女性が増加! おっさんの街『横浜・野毛』が変わったキッカケ」の続きです。ぜひあわせてお読みください。

野毛に開業した女子店舗では先発組、そして最大級の「バル」

 野毛未来研究所によると「野毛の女子店舗では最大級」といわれるのが、「Bodegon Nogue(ボデゴン ノゲ)」。Bodegonはスペイン語で「酒場」の意、Nogueは野毛のスペイン語表記だ。どっしりとしたカウンターがあり、ショーケースには「きのこのアヒージョ」「ソーセージと野菜のチーズ焼」「揚げなす冷製」「鶏手羽元で酢豚風」など、お酒に合いそうな料理がズラリと並ぶ。骨付きのスペイン産生ハムもデンと置かれ、出番を待っている。

 「ボデゴン ノゲ」の開業は、2007年8月。「スベインのバルのような、お酒と小皿料理を気軽に楽しめる店」をイメージして、山下亜矢子さんが37歳のときにオープンした。スナックのママでも小料理屋のおかみでもない若い女性店主が、野毛に開業した飲み屋としては先発組である。広さは10坪。内装は出費を抑えるため、壁もドアもカウンターもすべて自分でペンキを塗ったという。

2007年8月、山下亜矢子さんが野毛大通りにオープン。スペインのバル風な「ボデゴン ノゲ」
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スペイン産の生ハム、ハモンセラーノも人気のおつまみ
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お酒に合いそうな料理が各種スタンバイ
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カウンターでくつろぐ男性2人は、「なにを食べてもなにを飲んでもおいしい」と高評価の常連さん
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 野毛大通りに面した好立地、しかも店の隣は、立ち飲みのイタリアンを野毛で初めて開いて話題になった有名店「バジル」。開店はわずか3カ月違いだった。「隣りの店が満席で、入れないお客さんがうちに入ってくれたり、気に入って常連になってくださったり。まったく宣伝しなくてもお客さんには恵まれました。運が良かった」と亜矢子さんは振り返る。

向かって左が「ボデゴン ノゲ」、右手が「イタリアンバル バジル」。野毛大通りに面して人気店が並ぶ
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「女性が気楽に一人飲みできる店がない……、じゃあ自分で店をやるか!」と一念発起

 店を経営するのは初めてだが、亜矢子さんは接客業のキャリアが長い。20代のころは、昼間は事務職のOL、夜はレストランのウェイトレスと、二足のわらじをはく生活を8年間続けた。「私、飲食店の接客が好きなんです。お客さんと会話して、リピートしてくださるのが楽しくてたまらなかった。会社勤めのストレスを、ウェイトレスの仕事で解消していた」と笑う。その後、百貨店の派遣販売員なども経験するうち、「ある日『お店をやろう!』と突然思い立った」のだとか。“野毛”への出店は「横浜育ちの夫が勧めた」という。

「Bodegon Nogue(ボデゴン ノゲ)」の女性店主、山下亜矢子さん
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笑顔がチャーミングです(ブレてごめんなさい!)
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 飲み屋の主人ともなれば、酒ギライのはずはない。ご多分に洩れず、亜矢子さんも「お酒は大好きです!」とほほえんだ。開業を思い立ったのは、「自分が“一人飲み”したいときに気楽に飲める店がなかったこと」への募る不満だった。「男のバーテンダーがいる店で女性が一人飲んでいると、さみしい女のように見られるのがイヤで(笑)。女性がやっている飲み屋に行きたい。……じゃあ、自分でやるか!」と一念発起したのだという。腹を決めてから1年間、スペイン料理店でウェイトレスをしながらメニューや料理を学び、亜矢子さんはついに“自分が飲みたい店”を自分で開いてしまった!

 お客は40代から60代が中心。男女比は8:2。カウンターに女性スタッフがいると、女性客は酒好きの心が通い合うのか、味方がいるようで安心して飲める。狙い通り、仕事帰りのOLの一人飲みもよく見かけるそうだ。「飲める女性が増えましたよね。カップルでビールとカシスオレンジの注文が入ると、女性がビール、男性がかわいいカクテルを飲むんです」(亜矢子さん)。