高還元率のカードポイント競争への最良の対応とは

 実際、2013年7月現在、ポイント還元率の高さで最近話題になっているクレジットカードといえば、楽天カード、リーダーズカード、リクルートプラスカードの3種類だ。

 ちなみに楽天カードとリクルートプラスカードは、それぞれ楽天とリクルートが発行するクレジットカード。一方、リーダーズカードはジャックスが発行するカードであって、アマゾンが発行するカードではない。

 実はアマゾンは特定のカード会社によらず、非常に多くのクレジットカードとの提携ポイント交換でサイトへの集客を試みている。ポイント還元率の面での最右翼がジャックスが発行するリーダーズカードで、それがクレジットカード比較の世界で話題を集めているのだ。そのため、本コラムでは、この3つのカードの戦いを「代理戦争」と呼ばせていただくことにした。

 この戦いの基本形は以下の構図になる。

 ステップ1:業界リーダーが自社集客のために1%のポイント還元を行う
 ステップ2:チャレンジャーがリーダーに対抗してそれよりも高いポイント還元で挑戦する

 しかも、これらのカード代理戦争の話題は高いポイント還元率だけではない。それに加えて、カードに入会するだけで無料でキャンペーンポイントが付与される。

 楽天カードの場合、通常キャンペーンで入会すると、2000円分のポイントが無料でもらえる。また、リーダーズカードの場合は、9月末までのキャンペーンではカード入会でWeb明細に切り替えれば(金利がかさむリボには入らない前提で)2つのキャンペーン合計で5000円分の特典をゲットできるようだ。一方、リクルートプラスカードの場合は、8月21日までのキャンペーンでは入会時合計で、ポンパレモールで利用できるポイントが8000円分付与される。

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 ここでの疑問は、「なぜ、入会しただけでこれだけたくさんのポイントが無料で付与されるのだろうか」ということだろう。理由もわからずにお金をもらえると聞くと、何か裏があるのではないかと怖い気持ちになるはずだ。

 結論から言えば、この入会ポイントはもらってしまえばいい。というのは、3つのサイトとも、網を投げるように、まずはより多くの会員を捕まえてしまいたいと思っているからだ。10万人の会員を集めれば、一定の確率でカードをたくさん使ってくれる(つまりカード会社にとっても、ECサイトにとっても儲かる)顧客を捕まえることができる。

 5000ポイントや8000ポイントはそのための呼び水なのだ。他意のないキャンペーンの申し出だから、ここは受け取っておけばいいのである(ただし、リボを申し込むともらえるポイントは、ポイントと引き換えに金利を取ろうという他意がある。だからどのカードに入会するにも、リボだけは要注意である)。

 次に、どのカードを使ったらいいか。実は還元率の高さと、ポイントの利用しやすさは逆相関である。つまり最も品揃えが多くて使いやすい楽天市場が還元率が低く(といっても1%と結構高いが)、アマゾン、リクルートの順にポイント還元が高くなる。

 最も還元率の高いリクルートポイントは、「じゃらん」のような旅行サイトで使う場合は楽天トラベルで使うのと同様に使い勝手がいい。一方で、通販のポンパレモールはまだ発展途上なので、楽天ほどの品ぞろえはない。

 とはいえ、ポンパレモールには、オフィス文具通販の「ココデカウ」や「あきばお~」、「PCボンバー」といった格安な品ぞろえの大手サイトが参加を始めているので、ポイントの使い道は増えていきそうだ。

 アマゾンのポイントが1.8%還元になるという意味では、リーダーズカードの還元率もなかなか魅力的である。ただリーダーズカードもポイントで交換できるのは有効期限のあるアマゾン限定デポジットという条件になっていて、アマゾンギフト券よりも若干使い勝手が悪い。やはり還元率の高さと、ポイントの利用しやすさには逆相関があるのだ。

 そしてこの戦いの一番のポイントは、守る側の楽天が守りにくい戦いだという点だ。

 国内1位の楽天市場は、2011年に年間の取り扱い総額が1兆円を超えた。この規模に到達してしまうと、ポイント還元率2%は200億円になる。2012年12月期の楽天の純利益は194億円だから、軽々しく他社にポイント還元率を合わせるわけにはいかないのだ。

 一方で、リーダーズカードやリクルートプラスカードの保有者は、楽天での決済でもそれらのカードを使って1.8~2%のポイント還元を受けることができる。そして貯まったポイントは、アマゾンやポンパレモールで使うようになる。

 すると徐々に、消費者は、「こっちのサイトも楽天と品ぞろえが変わらなくなってきたね」と気づくようになる。これが還元率を高くしようとする側の論理であり、戦略である。

 だから、現在、繰り広げられている高還元率のカードポイント競争については、警戒せずに乗ってしまうというのが、消費者にとっては正しい対処法なのである。

著 者

鈴木 貴博(すずき・たかひろ)

 百年コンサルティング代表取締役。米国公認会計士。東京大学工学部物理工学科卒。1986年、ボストンコンサルティング入社。2003年に独立し、百年コンサルティングを創業。主な著書に『戦略思考トレーニング』(日本経済新聞出版社)、『NARUTOはなぜ中忍になれないのか』『「ワンピース世代」の反乱、「ガンダム世代」の憂鬱』(以上、朝日新聞出版)などがある。