博報堂ブランドデザイン若者研究所・リーダーの原田曜平です。今回は20代の若者に人気の「ロンドンハーツ」でMC(司会・進行)を務めているロンドンブーツ1号2号の田村淳さんと、近頃の若者について対談させていただきました。

田村 淳
たむら・あつし。1973年12月4日生まれ。山口県下関市出身。1993年、田村亮と共にお笑いコンビ・ロンドンブーツ1号2号を結成。コンビとして活躍する一方、個人でも多くのバラエティ番組のMCを務める

若者の心をつかむには、若者に媚びてはいけない

原田曜平(以下、原田):20代、特に男子に視聴率の高いテレビ番組と言えば、「ロンドンハーツ(以下、ロンハー)」「めちゃ×2イケてるッ!」「アメトーーク!」などが挙げられると思いますが、淳さんがMCを務める「ロンハー」が若者に人気があるのは何故だと思いますか?

田村 淳(以下、淳):若い子に向けて何かをしているという感覚は、僕にはないですね。
 自分が学生時代に見ていたテレビ番組は、出演者が本当に自由に楽しいことをやっている空気感があり、すごくワクワクしながら見ていました。特に「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」は、芸能界に入りたいと思うきっかけになったほど好きでした。
 今僕は、そういう空気感のある番組を10個も挙げられません。「飯をたらふく食ってお腹いっぱい!」なんてシーン見てもドキドキしませんし、テレビをつけることも減りました。テレビはもっとくだらない情報がつまっていないと、魅力的にならないと思っています。「ロンハー」にはそういうくだらなさが残っている。そこが若者に受けているんだと思います。若者だけじゃなく、どの世代もこの“くだらなさ”を求めていそうですけどね。

原田:「ロンハー」と「アメトーーク!」のプロデューサーの加地倫三さんとお話ししたときにも、「特に若者を狙っているわけではない」とおっしゃっていました。
 また、若者マーケティングを手がける立場として言わせていただきたいのは、やっぱり時代により若者の感性は変わると感じていて、その変化を表面的に理解し、表面的に迎合しようとすると、若者から拒絶されてしまい失敗に終わることが多いと思っています。
 彼らの感性を肌感覚レベルで深く分かった上で、普遍的で根源的な人間のニーズを狙い撃ちしないと、若者に受け入れられる商品にはなりません。淳さんや加地さんは、感性でそれを体現できてしまっているのかもしれませんね。

若者は「奇想天外」を求めている

原田:番組ではなく、淳さん自身が若者たちに支持される理由は何だと思いますか?

淳:あまり、若い子に支持されている実感はないです。自己分析はちょっと難しいですが……僕は、「何をしようとしているかわからない」「次の道で右に行くのか左に行くのかわからない」というような生き方をしたいんです。目の前に行ってから、右か左かジャッジする。長い道を、計算して生きることだけはしたくない。
 「よくわからない人」って、知りたくなりませんか? 「あいつ、何がしたいんだ?」というのは僕にとっては褒め言葉。「自由でうらやましい」と感じる人もいれば、「好き勝手に生きてて腹が立つ」などとヒール(悪役)のようにとらえる人もいます。でも僕は、「異質な存在」でいたいと思っています。そんなところが、若者に受けているのかもしれないです。

原田:予定調和じゃない、奇想天外な部分ということですね。インターネットが普及して、何か分からないことがあると検索一発で「答え」を探し出せてしまうので、すぐになんでも分かった気になる若者が多い世の中です。だから逆に、「分からないこと」「予想外のこと」に若者たちが魅力を強く感じるようになっているのかもしれません。

淳:淳の休日」(淳さんが休日に趣味で行って配信しているイベント)で、「マスクdeお見合い」という、マスクをつけてお見合いする企画をやったときに、「なぜわざわざ休みの日に“そんなこと”をするんですか?」という質問がたくさんきました。僕は、そういう人には逆に「なぜだと思いますか?」と聞くことにしています。たいていは、「分からないです」と答えが返ってくる。それに対して「僕も分かりません」「分からなくてよくないですか?」「全部分かろうとすることって、面白くないじゃないですか」「やってみないと分からないからやってます」と答えています。「わざわざ」にすごく意味があるような気がするんですよね。

若者たちは社会的意義のあるフラッシュモブを求めている

原田:確かに奇想天外です(笑)。最近、世界中の若者の間で「フラッシュモブ」(Flash mob。不特定多数の人がインターネット、SNSなどを通じて公共の場に集まり、事前の告知なく一斉にパフォーマンスを始め、その場に偶然いた人たちの驚きを誘うこと。さらにその様子をネット動画などで公開し、話題を広げていく)が流行していますが、淳さんの奇想天外な発想はフラッシュモブ向きですよね。

淳:以前、群馬県高崎市のシャッター商店街にあるソフトクリーム屋さんに行ったときに、「ここ何年もお客さんが満員なんてない」と聞いて、ツイッターで呼びかけ、その場でそのソフトクリーム屋さんを満員にしたことがあります。最後はソフトクリームの機械がパンクするほど一気に人が来ました。

原田:淳さんのツイッターのフォロワーは100万人以上いますから、フラッシュモブ的な行動での影響力は抜群でしょうね。シャッター商店街のお店を人でいっぱいにするというのは、単なるネタとしての面白さだけでなく、「ちょっといいことをしている」という社会的意義も感じられる。今の若者のニーズを満たせる呼びかけだったのかもしれません。