【インプレッション】えっ、トヨタ方式を超えられるとは思っていなかった?

 「完璧だ、どうやっても超えられない……と最初は思いましたね」と、ハイブリッドシステム開発担当の池上さん。

 数年前、自分がモーターやインバーター、バッテリーの設計を任されたとき、ライバルたるトヨタ方式を徹底的に研究。まずは巧妙な作りに脱帽せざるを得なかったという。

 「トヨタシステムは、2つのモーターとエンジンが常時、プラネタリーギア(遊星歯車)を通じてつながっていて、片方が上がると片方が下がりバランスを取るというやじろべえ式。これが調べれば調べるほど良くできていて、常にエンジンを最高効率のところで使えるんです。最初は、できるだけそれに近づけようと思っていました」

 トヨタの「THS II」はハイブリッドに求められるそれぞれの性能を「全方位で80~90点ぐらい」(池上さん)で実現できる驚異の万能システム。しかも、その技術はパテント(特許)でほぼ押さえられている。要するにこれを本質的に超えるのは無理……と最初は判断したわけだ。だが、ホンダの役員から直々に「業務命令」としてトヨタ超えを期待された池上さん。そう簡単に諦めるわけにはいかない。

 そこでさまざまなエンジニアと検討し、試行錯誤の結果生まれたのが、今のスポーツハイブリッドi-DCD(インテリジェント・デュアル・クラッチ・ドライブ)だ。これは今、ヨーロッパ車を中心に採用されている、デュアルクラッチミッションのケース内に動力モーターを内蔵する方法である。

 利点はさまざまだが、一番大きいのは伝達効率。大雑把に言えば、ハイブリッド車には、タイヤを電気モーターのみで駆動する「EVドライブ」、エンジンのみで駆動する「エンジンドライブ」、モーターとエンジンの両方を使う「ハイブリッドドライブ」の3モードがある。そしてi-DCD方式ならば、EVドライブとエンジンドライブをほぼマニュアルギアボックス並みの直結状態で行える。残るハイブリッドモードも最低限のミックス負荷でこなせる。つまり常時すべての動力源がつながっているトヨタ方式に比べ、パワー伝達効率が非常に高いのだ。

 いわばトヨタ流が、モーターパワーとエンジンパワーの驚異の連動性で効率アップを目指す「スペインサッカー」だとしたら、ホンダ流はそれぞれ個々の能力アップで全体のパフォーマンスを上げる「ブラジルサッカー」。そういうハイブリッド思想の違いがある。

 中でもホンダのi-DCDが得意とするのは、ほとんどエンジン直結状態となる高速域。同時にこの領域は常にモーターを引きずるトヨタ方式のウィークポイントでもある。よって当初、池上さんは「時速100km以上では絶対勝つ」と限られた範囲内でのトヨタ超えを目論んでいた。

 ところができ上がってみたらフィットはほぼ全域でアクア超えを果たし、36.4km/Lを達成できてしまった。一体どうしてなのだろう?

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