今回は、史上最年少でジャスダックに上場し、バイアウト(売却)で得た十数億円をたった2年で使い果たしたという自身の体験が詰まった書籍「お金が教えてくれること ─ マイクロ起業で自由に生きる」(大和書房)がヒットしている“連続起業家”、家入一真さんと、近頃の若者についてお話しさせていただきました。

家入 一真
いえいり・かずま。Liverty代表。起業家、投資家、クリエーター。1978年福岡県生まれ。地元福岡のデザイン会社、コンピューターシステム会社を経て自ら会社を設立。レンタルサーバーのpaperboy&co.創業者であり、JASDAQ最年少上場社長。40社程のベンチャー投資も行っている。クラウドファンディングプラットフォームCAMPFIRE共同創業者、partycompany Inc.代表、partyfactory Inc.代表、スマートECサービスBASE共同創業者、モノづくりベンチャーテッキン代表取締役、ロリポップ!、ブクログ、オンザコーナーなど数々のベンチャーを手がける。著書に「こんな僕でも社長になれた」(ワニブックス)、「お金が教えてくれること ─ マイクロ起業で自由に生きる」(大和書房)など。

一獲千金を狙ったのではなく選択肢がない中での起業だった

原田曜平(以下、原田):JASDAQ最年少上場社長でもある家入さんに憧れる起業家志望の学生は多いと思います。私が主催する博報堂ブランドデザイン若者研究所所属の約100名の「現場研究員」である若者たちに聞いても家入ファンがいます。一方で、若者の支持を得る家入さんの正体がつかめないビジネスパーソンは非常に多そうです。

家入 一真(以下、家入):  僕は中2から引きこもりでした。きっかけは、ある友達に下の毛が生えたことを相談され、それをみんなに話しちゃったこと。誰にも内緒でとは言われたけど“面白いネタじゃないか!”という気持ちで話したら、結局、口が軽いヤツだと仲間外れにされ、だんだんと学校自体に行きたくなくなりました。
 高校入学で変わろうとしましたが、友達もできずに中退。その後は画家を目指し芸大受験のために大検を取って、新聞配達をしながら予備校通い。でも3浪する間に親が事故に遭い、自分が働かなければならなくなり、デザイン会社に就職。
 ところがここでも、引きこもりの影響で大勢の人とのコミュニケーションになじめなかった。そうなると、朝も起きれず遅刻し、やがて出社したくなくなり……。結果、クビになり、違う会社に就職。でもまたクビになり……そんなことを繰り返し、自分には普通に就職して仕事することはできない、だったら起業するしかないと思うようになったんです。

原田:引きこもりだから起業しかなかったというのは、今、引きこもりをしている人たちがそれを聞いても、飛躍がすごすぎて、“自分事”化できなさそうです。もう少し、参考になるように詳細をお聞きしたいのですが。

家入:ある意味、選択肢がなかったんです。起業したのも一獲千金を狙ってではなく、ほかに進む道がないという後ろ向きな起業だったので……。実は当時、20歳そこそこでしたが、出会い系サイトで知り合った今の妻が妊娠したんです。それで「paperboy&co.」=新聞配達少年という意味を持つ名前の会社を起業しました。
 そんな状況ですから、当初は自分と家族だけが食べていければいいという程度。ところが手掛けていたレンタルサーバーの「ロリポップ!」が大当たり。そこでGMOインターネットに株を半分バイアウト(売却)し、東京に進出。僕が29歳のときにpaperboy&co.は上場しました。

原田:ところが家入さんは上場後にあっさりpaperboy&co.を辞めています。その後はカフェをはじめ、実にいろいろな活動をされている。特に「CAMPFIRE」については、2013年4月に、“堀江貴文氏が特別顧問に”などといろんな意味で話題になることが多かったと思います。

家入:CAMPFIREは約2年前に立ち上げた「クラウドファンディング」のサービスです。クリエイターが立ち上げたプロジェクトをCAMPFIREのウェブサイトに掲載し、それを見た人たちが小口で支援するというマッチングのサービスで、米国で2009年にスタートした「kickstarter(キックスターター)」の日本版とも言えるでしょうね。インターネット上で公開するアイデアに対し、賛同者から小口で資金を募るという。
 例えば画家にはその昔、大口のパトロンがいて、1000万円なりなんなりの支援をしていたと思います。でも今は不景気で、パトロン不在の時代です。だったらインターネットで1人(1口)1000円を1万人から集めれば、1000万円の資金が集まるわけです。

原田:CAMPFIREでは支援をしてくれた人を「パトロン」と呼び、そのパトロンには金額に応じたお返し=「リターン」が用意されているんですよね。

家入:そうです。単なる寄付でも、投資でもない。しかもリターンは金銭ではない。
 例えば映画を作りたいというクリエイターのプロジェクトがある。それに500円支援したらお礼のメールが届く。1000円支援したら特製ステッカーがもらえる。5万円支援したら映画のスタッフロールにスペシャルサンクスで名前が掲載される。10万円支援したら映画に登場できる……などといったリターンを、プロジェクトに応じて各クリエイターに用意してもらいます。支援者は“特典”を買う感覚で支援できます。
 このシステムの良さは、支援する人が、支援した時点でそのクリエイターのファンになれること。映画作りの段階から応援したいと思ってお金を出すことで、支援者はクリエイターのファンになり、そういうファンを数百人、数千人という単位で集められる可能性があるわけです。
 企業からスポンサー費用をもらって作った映画は公開後に初めてファンが集まるものですが、CAMPFIREの仕組みなら支援者と同時にファンも集められるんですよね。

原田:「お返し」が金銭でないというのは、今の若者の感覚に合っているのでしょう。
 タイプにもよりますが、今はお金だけのために動く若者は少なくなってきていると思います。先日も、ある程度、給料の高い会社の若手社員と話していたら、「10万円までなら給料が下がってもいいから、労働時間を減らして欲しい」と言っていて驚きました。給料がいいとはいえ、10万円と言えば大金です。しかしそれを放棄してでも、空いた時間を趣味や人のためになる時間に費やしたいと彼は言っていました。だからCAMPFIREのように、「お金」ではなく、「応援しているという実感」を見返りとして与えるのは、若者のニーズにも合致するのかもしれませんね。
 ちなみに、これまでにはどんなプロジェクトがありましたか?

家入:映画製作、新しいiPhone用のガジェットづくり、個展の開催、書籍の出版などさまざまなプロジェクトがありました。ちなみに過去最高の集金額は約990万円。米国のキックスターターだと1、2億円のものもありますし、公共事業もあるくらいなので桁が違いますが、日本でも集まる金額は大きくなってきています。日本のクラウドファンディング全体でいえば、『ハーブアンドドロシー』という映画が、「Motion Gallery」というクラウドファンディングのサイトで、国内で初めて1000万円を超えるファンディングを成立させてましたよね。
 CAMPFIREは掲載後、最短7日から最長80日の支援者募集期間内に、目標金額に達成しないと、集まったお金はすべて支援者に戻されるシステムを取っています。支援者たちは自分の支援が無駄にならないように、ツイッターやフェイスブックなどでプロジェクトを紹介するので口コミはどんどん広がる。もちろん、クリエイター自身も、SNSを通じて「残り1日、あといくら!」などと、どんどん発信していく。この達成感にはちょっとしたゲーム感覚があるかもしれません。