ヒットのセオリーを多数踏襲する「あまちゃん」

 NHK朝の連続テレビ小説「あまちゃん」が大人気だ。

 なにしろ毎日見ていて気持ちがいい。オープニングのテーマ曲からして元気が出るし、内容もコメディードラマということで、脱力しながら見ることができる。私の周囲にも「あまちゃん」にはまっている人は結構多い。

 私はヒット商品のメカニズムを分析するのが仕事のひとつだ。

 ヒットのセオリーとして、「素材自体にインパクトがある」「さまざまな世代が共感でき、口コミやつぶやきで広がりやすい」といった要素がある。これらは、あまちゃんにも当てはまるのだが、あまちゃんの場合、それらに加えて、最も重要な要素が当てはまっている。

 それは「つっこみどころが多い」という点だ。

 実際、twitterには、あまちゃんについて分析したり、今後の予測をつぶやくものがたくさん上がっていて、フォロワーを通じてその話題は毎日拡散している。

 今回のコラムでは、あまちゃんを見ていない人にもわかるように、ドラマの外観を説明しながら、その中で、どのようにこの「つっこみどころの多い商品はヒットする」というセオリーが踏襲されているのかについて、分析をしてみよう。

幅広い世代が楽しめる構成

 第1部の「故郷編」では、能年玲奈演じる高校生の主人公・天野アキが、岩手県にある北三陸市(久慈市をモデルにした架空の市)を舞台に、海女になるために奮闘する。やがて地元のアイドルとして人気の出たアキはスカウトされて東京の芸能事務所に所属する。

 2013年6月24日から始まった第2部の「東京編」では、全国各地から集まった地元アイドルで結成されるアイドルグループの一員としてのアキの奮闘談が展開されている。

 番組を通じたテーマが「アイドル」ということなのだが、現在進行形のエピソードに加えて、松田聖子や田原俊彦が活躍した1980年代のアイドルブームが、番組の中で繰り返し取り上げられる。その延長線上で、アキの母親役に小泉今日子、東京でのアキと深くかかわることになる大女優役に薬師丸ひろ子と、実際の80年代2大アイドルがドラマに共演するのも見どころだ。

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 さらにアキの祖母・夏ばっぱ役の宮本信子の存在感が、親子3代の視点でのドラマを成立させている。

 つまり、若者の視点でも、80年代アイドルブームを懐かしむ40~50代の視点でも、朝の連続テレビ小説のコアなファン層である団塊の世代以上の世代の視点でも参加できる朝ドラなのである。

 そしてこのドラマの脚本を書くのが、曲者として知られる「くどかん」こと宮藤官九郎だ。生来のエンタテイナーであるくどかんの、細部にわたって視聴者を楽しませようとする仕掛けが、あまちゃんへの視聴者の「つっこみどころ」を用意してくれている。

 そのつっこみどころは、ドラマの中でどのような仕掛けを使って提供されているのだろうか。