ミシュラン3ツ星を戴く「エル・セジェール・デ・カン・ロカ」の料理とは?

受賞後ステージに上がり、トロフィーを授与され、フォト・コールに応えるロカ兄弟。左2人目から、次男のジョセップ、三男ジョルディ、長男ジョアン
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 今年「世界のベスト・レストラン」の称号を手にした、スペインのジローナに居を構える「エル・セジェール・デ・カン・ロカ」は、キャラメルでコーティングした甘いオリーブを盆栽に吊るしてサーブしたり、エビに海の底を彷彿させるような独特のプレゼンテーションを施したりと、伝統的なカタロニア料理と実験的かつアバンギャルドなスタイルを絶妙のさじ加減でマッチさせた創作料理で名高い店。

 「世界のベストレストラン50」において日本ブロックの投票者や投票を統括するチェアマンを務めるレストラン・ジャーナリスト犬養裕美子さんは、「エル・セジェール・デ・カン・ロカ」の魅力はそれだけではないと言う。

 「今年のランキングを見てわかるように、『エル・ブリ』が店を閉めた後でも、スペイン勢の層の厚さは健在であると言えるでしょう。スペインに点在するレストランを訪れることは、レストラン・ジャーナリストにとって、“巡礼”のようなもの。私はよくバルセロナに入ってから、まずロカ兄弟のお母さんが経営するレストランでランチを食べます。ここで家庭料理を食してから、その夜ミシュラン3ツ星の『エル・セジェール・デ・カン・ロカ』に行きます。そうすると、あの母の味が3人の息子たちにどのように受け継がれ、新しい料理が生まれていくのかがとてもよく理解できるのです。『カン・ロカ』の料理は、そのソース使いなどにノスタルジックな味を感じます。人の心を打つ、とても人間らしい料理であることが素晴らしい。その後は、サン・セバスティアンの『ムガリッツ』に向かいます」と語る。

トレンドは欧州から北欧、そして南米へ、料理はまだまだ発展する!

昨年の35位から14位へと、今年最も順位を上げたシェフとして表彰されたペルーのリマを本拠地とする「アストリッド・イ・ガストン」のガストン・アクリオ氏
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ロンドンのレストラン「リマ」での、シグニチャー的な「蒸し煮したタコとオリーブの料理」。プレゼンテーションが美しい
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今年初エントリーで50位に入賞した、リマの「セントラル」のヴィルジリオ・マルティネス氏。彼の手掛けるロンドンの支店「リマ」も大きな話題になっている
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 「『エル・ブリ』を筆頭に、近年スペインが世界のガストロノミー界に台頭し、それまでフレンチやイタリアンを崇拝していた料理界の観念を大きく変えた。そして最近の北欧の若手シェフたちの新しい潮流は、さらに新進シェフたちの士気を高めることに貢献した。“料理の国籍にこだわる必要はない。国という枠を超えた、自分の料理を作ればいい。世界のファイン・ダイニングは、まだまだ発展の可能性がある”と、今世界の若手たちの鼻息は荒い」と犬養さん。

 「これからの注目株は、何といっても南米、特にペルー料理。豊かな食材を使い、ラテン・ヨーロッパ、日本や中華料理などのさまざまな要素を取り入れながら、洗練されている。今後このトレンドは、世界的に広がっていくでしょう」と犬養さんは付け加えた。

 確かにこの流れは既にロンドンのレストラン・シーンに登場し、1年くらい前からペルー料理店が街に旋風を巻き起こしている。特に、今年のランキング50位に初エントリーしたペルーの「セントラル」を指揮するヴィルジリオ・マルティネスがプロデュースしているロンドンの「リマ」は、昨年のオープン以来、数々のレストラン賞を受賞。 ライムなどエキゾティックなフレーバーで刺し身を食す伝統料理“セビーチェ”、アマゾンで獲れる白身魚など、ペルー独特のヘルシーで繊細な料理は、今ロンドンの美食家たちの間では大きな話題になっている。今年の秋にペルーで開催されるという、「ラテン・アメリカのベストレストラン 50」にもますます目が離せない。

スーパーフードといわれる、野生のブラック・キヌアとホワイト・キヌアを使った最高にヘルシーな逸品「2種類のキヌア・セビーチェ」
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ペルーのラテン的な要素を取り入れながらも、エレガントな雰囲気を醸し出している「リマ」のモダンな店内
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写真協力:(C)World's 50 Best Restaurants sponsored by S.Pellegrino & Acqua Panna, April 2013

(文/長谷川ゆか)

長谷川 ゆか(はせがわ・ゆか)
ジャーナリスト兼エディター
 大学の芸術学部を卒業後、女性ファッション誌の編集などを経て1991年に渡英。以来、食やインテリア、エコロジー関連など、ロンドナーのライフスタイルをテーマに、日本の女性誌を中心に寄稿。特に最近はフード・ジャーナリストとして、ロンドンのバラエティー豊かな”食”事情を各誌に執筆している。大のお酒好きが高じて、2007年に日本で利き酒師の資格を取得。
Twitter :http://twitter.com/yukaha1612  リアルタイムなロンドンの食情報を発信している。