世界の人の頭から「日本」が消えている!

 欧米だけでなくアジア各国でも日本の存在感の凋落(ちょうらく)は深刻です。2012年にインドネシアとマレーシアで3回にわたって家庭訪問し、合計60数名の方とお話をする機会がありました。そのときのエピソードです。

 ジャカルタとクアラルンプールでこれから訪ねたいアジアの都市を聞きました。シンガポールや香港が挙がりましたが、多くの人が韓国のソウルと答えました。「ハネムーンにはソウルに行きたい」とうれしそうに語る若い女性は印象的でした。日本同様、韓国ドラマがたくさん放映されていて人気を呼んでいるからなのかもしれません。

 「東京は?」と聞くとあっけにとられたように「えっ。考えたことがありません」という答えが戻ってきました。いま日本では、マレーシアからの観光客が増えているという報道がありますが、絶対数は取るに足らない数で、限りなくゼロに近いといっていいでしょう。

 マレーシアで中国系の中流家庭を訪ねたときのことです。

 大学生のお嬢さんの部屋で「VIVI」か「RAY」か(ご存じのとおり日本の若い女性向けのファッション誌)を見つけました。中国で発行されたものが輸入されていたようです。ページを開くとその中はほとんどが日本人のモデルでした。「日本のファッション誌がお好きですか」と聞くと、「いえ、これは中国の雑誌ですよ」という答えが帰ってきて、日本の雑誌という認識はまったくありませんでした。

 ジャカルタでインドネシアの航空会社の役員をしている方のご家庭を訪問したときのこと。日本では知らない人がいないわが国を代表する航空会社の方もわれわれの訪問チームの一員として参加されていました。その方が先方と名刺交換したときのこと。そのインドネシアの方は怪訝な顔をして「◯◯◯ですか。申しわけありません、御社を存じ上げませんでした。失礼ですが◯◯◯(もう一つの航空会社)の子会社ですか」と言いました。その方だけでなくチームの全員が「日本はそんなに知られていないんだ」と愕然としました。

 現在、海外で日本がどのように見られているかということについての日本国内の報道は、ほとんどが事実を正確に伝えているとは言いがたいものがあります。例えば、2年ほど前に「AKB48がジャカルタ公演をして同時にJKT48のオーディションが行われ大成功だった」というニュースがありました。その少し後にジャカルタの大学を訪問する機会があり、現地の学生たちにそのことを聞いたところ、それを知っていた人は1人もいませんでした。

 日本のマスコミは「***(国)でいま###が評判になっている」という報道が好きですが、その「評判」のスケールは相当疑ってかかったほうがよさそうです。現実には、海外の多くの人の頭の中にはもはや日本は存在しないというのが正しいでしょう。