下町の印刷会社がコスプレ業界に参入した意外な理由は?

 「コスプレなんて全く縁のない世界でした」

コスプレ名刺作成サイト「proof」を運営する印刷会社・長英の伊藤寿彦社長

 そう語る伊藤社長がコスプレ名刺を手がけるようになったのは、東京の下町・森下にある社屋の向かいに借りていたビルの活用がきっかけ。デジタル化の影響で紙印刷の需要が減り、印刷会社は苦戦を強いられている。伊藤氏は校正刷り(本印刷前の試し刷り)に使っていたスペースを縮小しようと知り合いの内装業者に相談したという。

 「そのときにその方から『娘の趣味がコスプレで、撮影する場所に困っている』という話が出たんです」(伊藤氏)

 そこで4階建てのビル1棟をまるごと改装し、2010年にコスプレ専用スタジオをオープン。これをきっかけにコスプレ業界との縁が深まり、前回紹介したコスプレ総合サイト「キュア」の西嶋氏にコスプレ名刺を勧められ、名刺印刷サイトをスタートさせるに至ったというわけだ。

「コスプレ専用スタジオ」は何が違う?

 コスプレ専用スタジオ「C-STUDIO」は4階建てのビルの1フロアに2つずつ、全部で6つのスタジオで構成されている。ピンクと白を基調にフリルに囲まれたかわいいロココ調からビリヤード台のある豪華なバー、十字架を設えた棺桶のあるゴシック調や廃虚風まで、まるでテーマパークのアトラクションのような非日常空間をそろえる。「1つのフロアに2つのスタジオがあるので、2着以上の衣装ではもちろん、同じ衣装でも2種類のシチュエーションでの撮影が可能になる」(伊藤社長)。

コスプレ専用スタジオ「C-STUDIO」。住所/東京都江東区森下2-7-6、料金/1フロア(2スタジオ)単位で1時間8400円(商業利用は別、長時間割引あり)、営業時間/11時~22時 (ナイトパックは22時半~9時)、電話番号/03・5625・5556(受付時間は11時~18時)。外観からはコスプレ専用スタジオには見えない
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受け付けスペースではスタッフと利用者が和気あいあいとコスプレ談義をするシーンも。プリクラは「コスプレ姿でプリクラが撮れるスペースは意外にない」というコスプレイヤーの要望で設置
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スタジオは4階建てのビルの1フロアに2つずつ、全部で6つのスタジオで構成。ピンクと白を基調にしたかわいい部屋からライブハウス、バー、廃虚まで、さまざまなテーマで趣向を凝らしたインテリア空間となっている
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 スタジオでは照明器具やレフ板、三脚などの撮影機材に加え、さまざまな小道具も無料でレンタルできる。そのラインアップは模造の剣やチェス、マイク、トランプ、羽根扇子、モデルガン、英字新聞、楽譜やバイオリンなどと実にユニーク。これらは見る人が見れば「ははーん、あのアニメだな」と分かる小道具なのだそう。こういったコスプレイヤーの心をくすぐる小技が効いているのも、専用スタジオならでは。「テーブルに置くグラスの曲線や十字架の形ひとつでも、より原作に近いものを探しました」と語るのは、現役のコスプレイヤーとして伊藤社長にスタジオ作りのアドバイスもした店長の大川千尋さん。

 このようなこだわりの空間であるにもかかわらず、意外だったのは建物の外観がどこにでもありそうなシンプルなビルだということ。小さい看板がなければ通り過ぎてしまいそうになるほどだ。「コスプレイヤーはコスプレ趣味を他人に知られたくない人が多いため、入りやすいようにあえて目立たないようにしている」(伊藤社長)という。

無料でレンタルできる小道具。キャラクターのフィギュアも豊富
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スタジオの案内表示もアニメファンの心をくすぐる小技が効いている
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