4月9日に発表された第10回本屋大賞の受賞作は、デビュー作『永遠の0』が160万部のロングセラーとなっている百田尚樹の『海賊とよばれた男』。2009年に『ボックス!』で初候補に残って以来、4回目の候補で大賞の栄冠に輝いた。

講談社/各1680円

 『海賊とよばれた男』は、出光興産の創立者・出光佐三をモデルとした長編小説。上巻380ページ、下巻362ページの大作だ。国岡鐡造という男性が、日露戦争や関東大震災、世界恐慌、第二次世界大戦、オイルショックなど激動の時代に石油業界で生き抜いていく95年の生涯を描いている。

 「日本にこのような血のたぎる男がいたのかと思うと身震いする」「国岡鐡造の熱い生涯に心打たれた」「日本中の大人の人が主人公の鐡造みたいな人間だったら、日本も変わるんじゃないかなと本気で思った」「日本人が自信を無くしている今こそ読むべき」など、書店員のコメントからは主人公の生きざまに強く感銘したようすがうかがえる。

 もともとこの小説は、モデルとなった出光佐三や戦後の日本を復興させていこうとした人々の生き方を忠実に伝えたいとの思いで百田が書いた作品。「初めて『今書かねばならない』という使命感を覚えて書いた、僕のなかでは特殊な作品でした。もしかしたら、それが書店員の方に伝わったのかなと思います」と、本屋大賞受賞後の質疑応答でも明かしている。

 まだ石炭が花形産業だった時代に、石油に将来性を予感した国岡。既得権にまみれた業界で法のすきまをかいくぐり、国内の業界で締め出されると海外で活路を見出し、世界の石油業界を揺るがす大事件を巻き起こす。幾多もの困難に見舞われながらも、国岡がゆるぎない信念と先見の明を示して乗り越えていくエピソードが、リアリティと迫力をもってこれでもかと重ねられていく。確かに、すごい男がいたものだと思わされる。

 偉大な経営者の人物記としても、日本を中心とした石油業界の歴史としても、充実した『海賊とよばれた男』。『永遠の0』ファンなら思わずにやりとしてしまうシーンも用意されている。欲を言えば、エピソードを事実に沿って脚色するだけでなく、主人公の強い信念を支えたものが何であったのかや、人並み外れた視野と発想を生み出せた背景などにも迫ってほしかった。