リーダーの理想は日露戦争の小山秋作

原田:数値化できない人材を企業が活かすには、何が必要なのでしょうか。

内田:皆が皆で高め合う組織を作るには、リーダーが要になる。基本的には私利私欲を追求せず、皆が一緒にいて楽しいことを目指す人。皆がハッピーな顔をしていると、自分もとても気分が良いというタイプの人です。日露戦争時に奉天軍政官を務めた小山秋作は、基本的に何も言わず、部下の好きに仕事をやればよい、戦に負けたら俺が腹を切るという人物です。軍功は全て部下にあげ、失敗の責任は全て自分がとる、こういう人が日本型リーダーとして最もふさわしい。日本人はこういうリーダーの下にいると、「やるぞ」となる国民性です。

原田:先日、親交のある元ヤクルト投手で現ロッテのコーチの川崎憲次郎さんと話をしたときに、元ヤクルトの若松監督がそういう方だったと言っていました。早い回でピッチャーがノックアウトされたら、普通監督は怒鳴り散らすのに、若松監督は「肩は大丈夫か?」などと心配してくれたそうです。選手全員がこの監督を胴上げしてあげたいという思いで、一丸になって優勝したそうです。

内田:部下にするにはダメだけれども、トップに据えるとすごい、という人はいます。一見でくの坊のようで、組織のトップに据えたら一気に組織を活性化させる人間を発掘して磨きあげるべきです。日本企業は人の器を見るということを全くしていません。

原田:以前、ある大企業の社長と飲んだとき、その方が嘆いていました。会社はそのステージで実績を上げた人物しか上に上げることができない。ところが、前のステージにはマッチしていたけれど、上のステージでは全く使えないという人が本当に多い、と。二等兵に求められるものと大将に求められるものは違うに決まっています。例えば、新人のときは言われたことをそのままやることが求められる。でも、上になったら自分で仕事をつくり出さないといけない。言われたことをそのままやることが得意な人と、自分でゼロからクリエイトすることが得意な人では、そもそも適性や器が違う。

内田:サラリーマンは、最終的にはイエスマンしか上がっていかないようになっている。ワンマンカンパニーは、なんだかんだ言いながら、成功していることが多い。しかし、成功してワンマンカンパニーにサラリーマンがたくさん集まってくると、たいてい2代目、3代目で傾いてしまう。後から入って来るのはイエスマンだから。経営者はある程度乱暴なことができないといけない。ところが、イエスマンである秀才型の経営者は、冒険ができない。自分もしないし、周りが冒険したいと言ってもやらせない。上の人が「失敗したら俺が腹を切る」と言えたら、皆がんばるのですがね。腹を切ると言って、実際に腹を切った人はいない。なぜなら「俺が腹を切る」と言えば、皆がんばって成功する。「俺が責任を取る」というのは、結果論ではなく、組織の機能を上げるための激励の言葉。トップが責任を取ると堂々と言えば、絶対に責任を取るような事態にはならない。「俺は責任取らないよ」と言うから、ますます事態が悪化していく。