この記事では2012年に話題になった「ヒト・コト・モノ」を、マーケティング的側面から振り返りたい。拙インタビュー連載「This is Hit!」において、いまのカルチャーやコンテンツ全般の課題として「ネットとリアルをいかに結ぶか?」「生活者とのインタラクティブ(双方向)な物語をデザインし、いかに体験化するか」といったテーマが2012年はリアリティを持って浮上してきた。数年前までは概念として、あるいは未来、海外の話として語っていたことが、日本でも当たり前になってきた印象だ。そこで、ここではそういった視点から、来る2013年も視野に入れたうえで注目すべき現象をピックアップし、そこから“ヒットの新・鉄則“を抽出してみたいと思う。

【1】「リアル脱出ゲーム」

 「リアル脱出ゲームが面白い」「ハマった」――。私の周辺にいる20代の人たちから、そういった声をよく聞くようになったのは去年(2011年)半ばくらいだったろうか。「リアル脱出ゲーム」はスクラップ社が主催する体験型の謎解きゲームイベントだが、実際私も参加してみて「なるほど!」と合点がいった。個人差はあるだろうが、リクツ抜きに“ドキドキする”のだ。脱出成功率は概ね高くはない。最後に種明かしをされたときの悔しさが残り、また挑戦してみたくなる。

 マンガ「宇宙兄弟」やアニメ「エヴァンゲリオン」、ゲーム「バイオハザード」など、人気コンテンツとのコラボが目立つのも、リアル脱出ゲームの特徴だ(企業コラボも)。会場はマンションの一室からホテルのホール、遊園地などさまざまで、日本だけでなくサンフランシスコ、台北、ソウルなどでの公演も好評の模様。2012年はアプリゲームも2作リリースし、2013年元旦にはテレビ番組(TBS系)も予定されている。それほど大規模に宣伝しているようにも思えないのに、口コミやソーシャルメディアでジワジワ人気が広がっていくところも“いま風”だ。

 詳しくはこの連載で同社代表の加藤隆生氏にインタビューした記事(「『大人は“部活”を求めている』―『リアル脱出ゲーム』仕掛け人、SCRAP代表・加藤隆生」)もご一読いただきたいが、その際の「大人は部活を求めている」というコメントが特に印象に残った。講演でご一緒した際に聞いた「僕らは装置を提供しさえすれば、物語や豊かさはプレイヤーの中で生み出される」という言葉もいまのヒット現象を考える上で示唆するところが多い。

【ヒットの新・鉄則 2012→2013 (1)】
「“みんなで解決”型の部活ノリを生み出す装置を作る」

【2】「ニコニコ超会議」

 リアル脱出ゲームもある種のイベントだが、2012年はほかにも話題のイベントが多かった。なかでも春に幕張メッセで開催された「ニコニコ超会議」(ドワンゴ主催)は、規模といい中身といい、インパクト満点だった(2日間で来場者数約9万人、生放送視聴者数約350万人)。これをもって「ネットとリアルの断絶の終わり」とまで表現していた記事もあったが、それもあながち大げさではない気もした。いずれにせよ、“祭り”は盛り上がる。

 超会議は「ニコニコ動画のすべて(だいたい)を地上に再現する」との触れ込みのイベント。実際、広い会場のアチコチでニコ動の人気コンテンツを実演しており、ネットがリアル化しているともいえるし、逆にリアルがネット化しているともいえ、その混沌とした感じが現在のリアリティなのでは? とさえ感じた。2013年も開催されるそうだが、どれくらいの盛り上がりになるかに注目したい。

これに限らず、六本木のnicofarre(ニコファーレ)では、ニコニコ動画の生放送と連動した様々なミニイベントが開催されており、先日行われた「第4回ニコニコ学会βシンポジウム『研究してみたマッドネス』」(詳しくはこちら)を取材したが、プロアマ、理系文系を超えたさまざま研究がプレゼンテーションされるだけでなく、コンテンツとしての見どころも計算されており、興味深い試みだと思った。

【ヒットの新・鉄則 2012→2013(2)】
「リアルとネットを同一軸で捉える超コミュニティーな“祭り発想”」