「革を折り曲げたり、あっちこっち向きを変えたりしながら、構造を考えるのが好き」と語る、一級建築士の資格を持つデザイナー村上雄一郎氏。彼の、構造から形を考える発想力が生んだ、財布の大変革が「ミッレフォッリエ」だ。

 札を取り出すときと、コインを取り出すときには財布を持ち替えなければならないという構造を見直したのが大きなポイント。一度開いたら、その状態で紙幣もコインもカードも出し入れできる財布を作り上げた。その結果、従来の財布とは似ても似つかない形になったのだが、実際に使ってみると、もしかすると、この形こそが財布の正解の形だったのではないかと思えてくるほど、「ミッレフォッリエ」の形状は理に適っている。

ミッレフォッリエ IIP 25(エムピウ、実勢価格1万2600円)。幅110×奥行き85×高さ25mm
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 スクエアな形状で、財布全体をくるりと革で巻いたようなデザインは、それだけでも特殊。大量のカードを収納できるカードケース部に、箱形に立ち上がり、コインの出し入れのスムーズさが抜群のコインケース部を同一方向にまとめ、紙幣をコインケースやカードケースの下に潜らせることで、省スペースも実現したスタイルは、独特なのに使い方に迷わないのだ。

 手に持って、開くだけで、どんな風に使うのかが一発で分かる。「お金の出し入れをする動線に沿っているので、無駄な動き無しで支払いができる」と村上氏。この財布を使うようになってから、お金を取り落とす事がなくなったと言う。

 実際に使ってみると、紙幣は露出しているから枚数が数えやすい。コインケースは箱形で底面積が広く、隅々まで見渡せるので、全体を見ながら必要なコインを必要な枚数をサッと取り出せる。名刺入れのような凹凸の少ない外観だから、ポケットやカバンからの出し入れもスムーズだし、ポケットが膨らみ過ぎない。カードを10枚以上入れても財布の形が崩れる事もない。出し入れも、目的のカードを探すのもスムーズだ。

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 「財布に持っていた不満を解消して、自分が使いたいものを作りたかった」と村上氏が言うように、自分が使いたいものを発想し、何度も試作を繰り返してアイデアと構造を練っていく村上氏のこだわりがあったからこそ実現した財布なのだ。

 最近はようやく、従来の財布の常識にとらわれない革の財布がいくつか登場しているが、その最初は、この「ミッレフォッリエ」だった。何もないところに打って出た村上氏のアイデアと技術が、新しいジャンルを開いたと言えるだろう。

 さらに「ミッレフォッリエ」には、初代のタイプにはなかった、SUICAなどのICカードを入れるポケットを装備。カード入れとは別に、紙幣押さえの部分に隠しポケットのような形でカードスリーブが用意されている。カードケース部分だと、入れる場所によって上手く反応しないこともあるし、出し入れが頻繁な部分だけに、取り落とす可能性もある。基本的には財布に入れたままで使うICカードは、専用の場所があった方がよいに決まっているのだ。このICカード対応で、この財布にほぼ死角はなくなった。とにかく、一度使ってみる事をお勧めする。財布という道具を見直す事になるはずだ。


(文/納富 廉邦)


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